著者 : 二郎遊真
悪党が見た星悪党が見た星
「娘をさらった。午後にまた電話する」関東一円の繁華街で、中華料理店を展開する片岡家の一人娘が誘拐された。要求額は六千万円。現金を用意したのは、片岡の取引先である北城興業。だがその実体は、千葉を本拠にする暴力団組織であり、一方の片岡本人もまた裏社会においては、軍の流れ品や臓器売買までを取り扱う筋金入りの闇商人である。警官が屯する片岡家に現金を運んできた、北城興業No.2清高文児は、彼らの行動に不自然さを覚えた。そう、気づいたのだ!これは、あまりに壮大な茶番劇のプロローグにすぎないと。
マネーロードマネーロード
4年もの間ホテルにひきこもる、他者との肉体的接触を極度に嫌う、相対する人間の“金に対する想い”が様々な幻覚となって現れる-これらはネット上で「金の声を聞く男」と呼ばれ、株式市場の値動きを予見し二百五十億円超の資産を築いた「ヒィ」の「症状」である。その彼のもとに、一枚の旧札が送られてきた。それこそが、捨て子だった「ヒィ」の本名が記された伊藤博文の千円札、失くしてしまった唯一の大事な宝物だった…。送り主は、投資ファンドの代表である沢谷という男。かつて「ヒィ」との仕手戦で屈辱的な大敗を喫していた。描いた絵図を台無しにした仇敵「ヒィ」に対して、巻き返しを図る沢谷は何を!?第39回メフィスト賞受賞作品。
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