著者 : 匝瑳玲子
幼なじみの相棒エヴァンとともに深夜、無人のはずの質屋に忍び込んだダニーは、そこで質屋の主人と鉢合わせしてしまう。逆上したエヴァンが持っていた銃をぶっ放し、ダニーは一人、その場から逃げ去った。そして七年が過ぎた。犯罪世界からは完全に足を洗い、建設会社に勤め、恋人のカレンと同棲するダニーの前に、質屋の事件で刑務所に送られたエヴァンが現れる。事件直後に逮捕されながらも、ついに共犯者であるダニーの名前を出さなかったエヴァンは、それを恩に着せ、自らの犯罪に加担することをダニーに強要する。今の生活を守りたいダニーは拒むが、エヴァンはカレンを脅すことで圧力をかけてきた。ついに屈したダニーは、エヴァンの誘拐計画に力を貸すことになる。だが、誰も傷つけぬようにしようというダニーの思惑とは裏腹に、エヴァンは暴走を始める…自らの人生を賭けた、自らの過去との闘い。信じられぬ輝きを放つ、注目のデビュー作。
妹が死んだ。弟が暴れん坊になった。母が鬱になった。父は何もできなかった。そしてぼくの頭の中に広島で被曝した日本人の男が住み着いた。人が焼け、建物が焼け、破壊された風景が目にみえる。ぼくに…何ができるだろう?戦争のもたらした災厄を目の当たりにし、多くの試練が振りかかるなか、少年ヘンリーは大人になってゆく。そしてヘンリーの身に起こったのは…。純粋に生きること。その意味を描き出した文芸大作。
黒人も女性も、自分たちの立場をわきまえていた。“ゲイ”という単語は、まだ“ハッピー”の同意語にすぎなかった。商店は日曜日に休業し、われらの爆弾は敵の爆弾より大きく、米国陸軍は無敵だった。無知な私は、世界はすべて順調にいっているものと思っていた。1958年は、そんな時代だった。テキサスの田舎町デューモントに引っ越してきた私は、まだ13歳だった。父さんのドライヴ・イン・シアターで映画を観て、新しく出来た友達と遊び、姉とそのボーイフレンドを冷やかして、夏休みを過ごすはずだった。ところがある日、家の裏で犬と遊んでいた私は、地面に埋められていた古い手紙と日記の断片を発見する。それは思春期の少女が綴った恋の記録だった。さらにその先の森には、焼け落ちた屋敷の跡が黒々と聳え立っていた。好奇心にとらわれた私は、古い事件を調べてみた。そこでは13年前、火災で一人の少女が命を落としていたのだ。さらに奇怪なことに、同じ夜、町外れにすむ別の少女が、首無し死体で発見されていた。どちらの事件も真相ははっきりしないままだ。私と姉は、事件の真相を突き止める決心をするが…人生で最高に輝いていた夏休みと、それを彩った数々の事件。MWA賞受賞作『ボトムズ』をも凌駕する、鬼才の最高傑作。