著者 : 大下英治
「海部俊樹は総理という名の閣僚だよ。いつでも首のすげ替えはできる」ポスト海部のシナリオは、各派閥の思惑入り乱れ、着々と進む。安倍晋太郎は竹下登との“約束”に望みをつなぐ。渡辺美智雄は宿願の渡辺派旗揚げで一歩前進。宮沢喜一も、首領金丸信にすり寄る。しかし、金丸の秘蔵っ子・小沢一郎をはじめ、人気の高い橋本龍太郎、「理念」を旗印とする石原慎太郎も虎視眈々と下剋上を狙う。が、粘る海部…。自民党知将たちの覇権の攻防を描く待望の政界野望長編小説。
甘い蜜に群がった女たちの「愛」と「野望」。男から8千万円をせしめたレストランの女経営者。元首相のために真言密教の祈りを捧げる女金庫番。父親の会長から5百万円をおどしとった水商売の女。男の浮気に憤る妻と娘。鬼才が初めて描く恐るべき真相。
「なぜ海部なのか?」派閥論理に破れた若手議員は、海部総理誕生の瞬間、無力感に打ちひしがれた。かたや橋本龍太郎を、かたや羽田孜を担ぎ奔走したものの、結局は老獪な長老たちに利用されただけだったのだ。「大臣なんかやる気はない。でも。総理大臣は別だ」と河野洋平は言う。一方、安倍晋太郎を脅かす渡辺美智雄は着々と足場を固めている…。はたして海部以後の権力者は誰か?次を狙う永田町の野心家たちを描くドキュメンタリー・ノベル。
平和相互銀行の帝王・鬼里山秀蔵は己の事業と地位をより強固にするべく、もと地検で“カミソリ”の異名を取った菊坂重光を顧問弁護士に迎え入れる。が、野望空しく鬼里山は急死。代りに菊坂が第2の帝王たらんと、鬼里山一族はじめライバル潰しを画策する。その内紛を政財界は座視するはずがなかった。平相銀呑み込み作戦が密かに開始されたのだ。
美智子はネクタイを持つ手に、もう一度、力を入れた。首を締めつけた。真二の口から、細かい泡が出た。が、その泡も出なくなった。美智子は突然、思いついた。〈このひとをわたしのものにするんだ!このひとの大切なものを切り取ってやる!〉(「五十一人目の阿部定」より)-事件の陰にひそむ哀しい人間の業を抉る迫真のドキュメント・ノベル。