著者 : 大村美根子
カフェ・コメディの人気女性コメディアン、トレイシーが二年前の雨の夜、突如姿を消した。事件は死体なき殺人と断定され、友人のボビーが逮捕される。女探偵シャロン・マコーンは、無実を訴える彼のため、再調査にのりだす。が、カフェ・コメディのオーナーやボーイフレンド、ルームメイトが語るトレイシー像は奇妙に食い違う。いったい彼女はどんな人間だったのか。人気シリーズ待望の第五話は怖さがいっぱい。
マンハッタンの超高級マンションの一室から、若い美貌の男性の死体が発見された。男は裸で黒革の拘束マスクをつけ、片脚を切断されていた。身元を探るヴィンス刑事の許に、七年前の殺人未遂事件で昏睡に陥っていた被害者の女性ベイブが、覚醒したという報せが届く。犯人とされた彼女の夫は、有罪答弁取引きですでに釈放されている。一見無関係な二つの事件が、複雑に絡み合いー。
愛する夫が自分を殺そうとしたという事実がどうしても信じられないベイブは、ヴィンス刑事と協力して事件の再調査を進める。家族はなぜか彼女に詳しいことを語りたがらない。彼女には昏睡中のかすかな夢の記憶があるのだが、それはパーティ着の男女が黒革のマスクをつけた若者をいたぶる異様な場面だった。全く覚えのないことをなぜ夢に見たのか?謎は一層深まり、意外な結末へ向う。
サンフランシスコに数多く存在する古風なヴィクトリアン・ハウス。その一つの中で“わたし”の友人が何者かに殺された。死体には赤いペンキがベッタリ…。ハウスの保存運動をめぐる確執か、それとも?唯一の手がかり〈チェシャ猫の眼〉を求めて“わたし”は事件の解決にのりだす。が、〈猫〉を手にした者たちは次々と謎の死をとげていくー。「不思議の国のアリス」の木の上で笑う猫よ、犯人を教えて。
演劇評価家ジャドスンは、50年前に一度命を狙われたことがあった。今、深夜に一人で原稿を書いている彼を、老練な俳優スピヴィーが訪ねてきた。そして、かつての狙撃未遂事件の犯人は自分だ、演技を酷評された恨みからやったのだと、冷たい声で告げたのだ、ジャドスンは震えあがった。スピヴィーは、今になって50年も前の恨みをはらそうというのか?それとも他に目的が?…一つの劇評が招いた悲喜劇を描く、上記「イーストポートでの再演」をはじめ、映画、奇術、音楽などエンターテインメントの世界に材をとった、人目をあざむく15の犯罪。