著者 : 宮城賢秀
富沢町の呉服織物問屋『大黒屋』に押し入った鳶沢の文吉らは、千五百両の大金を盗み逃走した。その一味である初老の盗賊・半助は、追っ手から逃れ、かつての恩人の息子を尋ねて三浦郡へやってきた。そこには、かつての自分の仇討ちの為に命を落とした、友三に瓜二つの息子・常吉の姿があった。半助は、自らの素性を打ち明け、常吉に盗賊の仕事を手伝うよう勧めるが、常吉が選んだ職は意外にも貸本屋稼業だったー。やがて、半助の身に危機が迫っているのを知った常吉は…。著者渾身の書き下ろし時代長篇。
大和国郡山藩の馬廻りの滝河克蔵が、赤羽橋附近で二人の刺客に襲われた。克蔵の剣術で一人は仕留めたものの、一人は素性も判らぬまま逃亡した。一方、三日市藩内で田畑を搾取されたという直訴状が、将軍家斉に届けられた。その裏探索の密命を受けた武田哲太郎と近藤輝之進は、意外にも滝河を狙った刺客が、三日市藩の徒士目付であることを知る。だが、双方の事件を探る二人に、次々と追手が襲いかかり…。書き下ろし時代長篇。
俵物問屋『万代屋』の押し込み探索に当たった鳥居耀蔵の家来・明智惣五郎は、十五人一家惨殺の現場を横目に、同店が唐物の抜け荷を扱っていたことを嗅ぎつける。下手人の追及とともに消えた荷の行方を追う明智は、背後に巨大な力が働いていることを垣間見る。幕府本丸目付である鳥居は、明智を薩摩へと奔らせ、裏探索を進める。やがて鳥居は、事実を明確化すべく画策を始めるが…。書下ろし痛快時代長篇。
江戸南町奉行より密命を受け、裏探索方を務める内与力の早乙女源六は、配下に定町廻り同心筧彦七、岡っ引き甚八ら六人を従えていた。その源六らが、妙な事件に巻き込まれる。一刀のもとに斬殺された死体を発見するが、辻斬りの目的は物盗りではなく大小の抜き身にあり、しかも次々と襲われるのは薩摩藩士だった。何故刀を。やがて、刀に隠された真相と謎の集団を追って、源六たちは京へと上る。長篇本格時代小説。
南町奉行、内与力早乙女源六は、定町廻り同心筧彦七と岡っ引きの甚八ら六人を従えて裏探索方を務めていた。源六は老中より阿片がらみで失踪中の旗本、黒田左太郎を追うよう密命を受ける。その黒田が斬殺体で発見され、三日後に薬種問屋「肥前屋」から千両箱と阿片の入った皮袋が盗まれた。源六たちは、黒田家と確執のあった中野播磨の屋敷を見張り、不審な動きをする男たちを追って長崎へと旅立つ。長篇本格時代小説。
筒井和泉守政憲は江戸南町奉行に就任するや、早乙女源六を内与力にするとともに、定町廻り同心筧彦七をつけて裏探索方を命じた。そして彦七の下には手足となって働く、岡っ引きの甚八以下五人が控えていた。この六、七、八の捕物陣七人が江戸の凶悪事件の探索に当たり、浅草と麹町で同時に起きた紙問屋の押し込み強盗を追って動き出した。-街道を走り、十手捕縄を操り次々と下手人をあげる痛快本格時代小説。