著者 : 富島健夫
瀬戸内の島でアバンチュールを楽しんだ真吾は、その足で帰省し、恋人・妙子と再会をはたす。そんな折、高校の同級生だった安希子が訪ねてくる。見合い結婚で嫁いだ安希子は、ひと月も経たぬうちに出戻ってきていた。誘われるまま二年ぶりに彼女の家を訪れた真吾は、驚くべき離婚の真相を聞く。真吾にとっては、かつて安希子を女にしたのは自分であり、どんな状況にあっても愛すべき不良少女なのであった。
母校の教師・進英子と郷里の料亭に出かけた真吾は、客から逃れてきた若い仲居の虹子をかくまう。三人で枕を並べることになったその夜、虹子は子ども時分から現在に至るまでの半生を語り出す。家柄や貧富の差などに翻弄されながらも力強く生き抜いてきた凄絶な虹子の人生ー。戦中戦後、愛と性に目覚めた少年時代から模索し続けてきた宮崎真吾の女人探訪の旅、その行き着く先は!?青春官能大河ロマン、遂に完結!
大学三年生になった真吾は、同級生の宮本から彼が住むアパートの部屋を借りないかと持ちかけられる。宮本は、アルバイト先の事務員で人妻のセイ子と関係ができ、さらには彼女から紹介された子持ちの未亡人・絢子とも深い仲になったという。そして、用心棒も兼ねて絢子と同居する顛末を真吾は聞かされたのだった。真吾の新しい部屋・昭和荘には雑多な人々が住んでおり、早速男女間トラブルに巻き込まれることになる。
新居の昭和荘に移った真吾の周辺では常に騒動が起こっていた。同じ階の金杉の恋人・あゆ子や、階下の人妻・時江からも誘惑されるがなんとか逃れ、改めて東京にはいろいろな人間がいることを痛感する。-そしてまた夏、郷里に帰る真吾は駅で同級生の岡本と偶然一緒になり、車内で知り合った春絵に誘われて彼女の実家がある瀬戸内の島に立ち寄るため途中下車をする。夏の島には濃厚なアバンチュールが待っていた。
夏休みを終えて帰京した真吾は、約束どおり下宿先の未亡人ちえと関係する。若くして夫を戦争で亡くし、義父母や娘に尽してきた古典的でつつましやかな女性、ちえ。性愛とは無縁の生活を送ってきた彼女に一時でも女の悦びを与えられたことに満足する真吾。一方で、東京での性のパートナーである女子大生の明美から、他の男と寝たことを告げられる。遊びと割り切った関係だったのに、なぜか真吾は胸の痛みを覚える。
明美が他の男と通じた事実を受け入れた真吾は、これからも二人の関係を継続することを約束する。さらに、親密な関係になった下宿先の未亡人ちえと利用した旅館で知り合った芸者の松美から遊びに来るよう誘われた真吾は、金もない学生に声をかける彼女の真意をはかりかねる。松美はパトロンの「いいさん」まで呼びだして、ついには三人によるエロティックな性技が繰り広げられることに。愛と嫉妬が燃え上がる一夜の宴。
昭和26年春。大学二年になった真吾は、ある朝満員の電車内で下宿先の未亡人ちえと一緒になる。すし詰め状態の車内で、偶然か故意か、ちえの手が真吾の下半身に触れてきた。貞淑なちえからは想像もつかなかった行動に驚く真吾だが、されるがままにまかせる。一方で、性の実験目的で始まった女子学生・明美との関係は深まるばかり。さらに、下宿先の隣人・千賀からも好意を寄せられ、強引に迫られることに。
夏休みの帰省を前に、下宿先の未亡人ちえに誘われて観劇に出かけた真吾。厳格な姑のもと貞淑な嫁に徹するちえの意図を測りかねるも、何かが起きるのではと淡い期待もしていた。帰省のために乗った列車では、隣席の人妻・佳子と同郷であることがわかり、話がはずむ。佳子は、浮気をした夫と一時距離を置くため里帰りするところであった。さまざまな女たちとの交情を繰り返し、真吾の性的探訪の旅はまだまだ続く。
大学一年の夏休み、帰省した真吾は久々に恋人・妙子とからだを交える。そんな折、真吾は高校の同級生であった今井鈴子の訪問を受ける。在学中はあまり接触のなかった鈴子だが、封建的な家で窮屈に暮らす鈴子の胸の裡に性への憧れが芽生えていると感じ取った真吾は、夏のあいだ時々会うようになる。女教師・美津との再会、懐かしい顔が揃ったクラス会など、真夏の故郷を舞台に繰り広げられる、エロスの祭典。
夏休みを終え東京に戻った真吾は、大学の構内で年上の明美と知り合う。文学部の三年で作家志望の明美は未経験者であり、彼女の「女になる」という希望を叶えるため、ふたりは出会ったその日に旅館に向かう。自意識が強く理屈っぽい明美に多少の疎ましさを感じつつも、時折いじらしくなったり、可愛いことを言ったりするその振幅の大きさや、他の女性とは一風違う個性に次第に魅力を感じるようになっていく。
昭和24年春、真吾の通う高校は女学校と合併して共学となった。意外なことに高校三年生の真吾の心をとらえたのは、女生徒ではなく新任女教師の香原美津だった。ある日の放課後、野道で偶然出会った美津と真吾は、急速に接近していく。美津とは互いに“遊び”と割り切った関係でスタートしたが、大学出のインテリ女性の知的な雰囲気や成熟しきった女の魅力、そしてあからさまな積極性に真吾はのめり込んでいく。
大学進学を機に上京した真吾は、賄い付き下宿の金沢荘に入居する。金沢荘には一人娘で高校三年生のアキがいたが、高校の先輩で同室の小松原から、彼女には気をつけるよう助言される。アキは天性の好色女で真吾も誘惑されるが、冒険心から誘われるままにアキの部屋を訪ねるようになる。アキのほうも真吾に夢中になり、他の男との関係を断つようになったことで金沢荘の古株、今重の逆鱗に触れ、事件が勃発する。
主人公の宮崎真吾は戦時下の中学生。いとこ千鶴との性的な戯れに心揺らす一方、幼なじみの妙子にも熱い恋心を抱き、悶々とした日々を送っていた。-徐々に性に目覚めていく真吾。戦中から戦後へ、時代や価値観が急変していく中にあって変わらぬ男と女、愛と性の営み。自然が匂い立つような風土の中で、未知なる世界へ踏み出す少年の性や心情を丁寧に描いた、著者代表作ともいえる青春大河ロマン待望の復活。
思わぬ相手と初体験を済ませた真吾は、遂に恋人である妙子とも結ばれる。時は昭和23年、学制改革に伴い真吾は新制高校二年となり、妙子は女学校を卒業。そんな折、ひょんなことから旧家の出戻り娘・小菊と妖しい一夜を過ごすが、わずか六日後に小菊が出奔してしまう。新しい時代の到来とともに、押し寄せてくる「自由」という大きな波。大人への道を模索しつづける少年の愛と性を大胆に描いた青春官能小説。
「あなたはもうりっぱに一人前の男。だからあちこち女に手を出しちゃいけんと。キクちゃんだけを可愛がって」と円太郎を諭す隣家の人妻アレ。しかし主人公・里見円太郎も14歳。旺盛な性への探求心はあふれんばかりである。幼馴染みのキクとの“相互愛撫”から村で一、二を争う器量よしの間垣ナミに抱かれる快美感と、とどまるところを知らず。村の男たちの交情話にもますます性への想いをつのらせる円太郎であった。傑作大河性愛小説。
本田由夫、ナホ夫婦は二階を貸間にしている。その一室に平井が越してきた。そして平井の恋人・信子は、あろうことか、平井の情事をナホに洩らした。なんと華麗?なる行動…その思いがどう発展したのか、いつの間にかナホは平井に燃えだしていた。平井の両腕がナホの両脚の間に入る間柄となった。夫の顔が脳裡をよぎる。が、浮気の一回や二回、現代の常識よ。あんただって、レストランの女の子と熱海で…。ナホは自分を納得させ始めた。多彩なシークレット・ラブの狂詩曲。
「私を好きになって」15歳の東海士郎は、2歳年上の桃子に誘惑される。その直後、士郎はアルバイトで魚を売りに行った農家の若妻となりゆきで初体験をする。その上、年老いた伯父の若い後妻とも関係をもつー3人の年上の女性に誘惑され、翻弄されながら、男として成長する少年を描く長篇官能ロマン。
母を亡くし、叔母の家に世話になっている玲子。高校へ進み、叔母の夫の和郎の執拗な誘惑に耐えかねた玲子は独立を決意する。保育園で働くうちに、一児の父吉川を知る。園児まゆみの父吉川は、玲子にとってやがて一人の男性、吉川誠一となる。母のいないその家を訪ねるうちにいつしか玲子の気持は結婚へと進んでゆくのだった。18歳の妻、そして母親役も兼ねた玲子のたくましくも、激しい青春のすべて。映画化、TV化で既に大評判作の文庫化。