著者 : 山本やよい
貴族の娘フルールは、恐ろしい過去を抱えひとりロンドンへ逃げてきていた。所持金がなくなった彼女は生きるためにある決断をし、通りすがりの紳士に救われるが、そのことで心に大きな傷を残す。数日後、再び困窮し職業斡旋所を訪ねたフルール。すると幸運にも、リッジウェイ公爵家で家庭教師の職に就くことになった。始めはなつかなかった一家のわがままな少女とも少しずつ打ち解け、数週間が経ったある日、長く屋敷を留守にしていた公爵アダムが帰館する。アダムは、誰にも打ち明けられぬまま背負ってきた苦しみが、愛情豊かなフルールの存在によって癒されていることに気づく。ためらいながら、ひそやかに惹かれあうふたつの孤独な心。しかしフルールは、アダムに怯えていた。そこには、決して知られてはいけない秘密があってー。静かに募る情熱と、涙を呼ぶ感動の結末。美しくもせつない大人の愛の物語。
16年前、高名な画家だった父を毒殺した容疑で裁判にかけられ、獄中で亡くなった母。でも母は無実だったのですー娘の依頼に心を動かされたポアロは、事件の再調査に着手する。当時の関係者の証言を丹念に集める調査の末に、ポアロが探り当てる事件の真相とは?過去の殺人をテーマにした代表作を最新訳で贈る。
料金は一日百二十五ドルと必要経費。報告書は作成しますが、調査方法の指図はお受けしませんー夜遅くに事務所を訪れた男は、息子の恋人の行方を捜してくれと依頼する。簡単な仕事に思えたが、訪ねたアパートで出くわしたのはその息子の射殺死体だった。依頼人が被害者の父親ではないことも判明し、さらには暗黒街のボスが脅迫を…圧力にも暴力にも屈しない私立探偵V・I・ウォーショースキーの熱い戦いが始まった。
公園のブランコから女性の死体がぶらさがっているとの報を受け、ダイヤモンド警視は現場に急行した。自殺かと思われたが、まもなく女性が絞殺されたうえで吊るされたことが判明する。元夫、現在の恋人、レストランのヘッド・ウェイター、ビジネスマン、次々と容疑者が浮上するが、ダイヤモンド自身は捜査に集中できない状況に陥っていた。彼のもとに不可解な恋文や贈物が執拗に届いていたのだ。ダイヤモンドは今も亡き妻を愛しているというのに、誰がこんないたずらを?そんななか、失踪していた元夫が首吊り状況で死体となって発見される。それは類例を見ない首吊り処刑の連鎖だった…。男と女の愛と業を謎に絡め、英国ミステリ界の巨匠ラヴゼイが放つ意欲作。
出版社を経営するエドガー・ブラッカーが放火により殺された。彼は歯に衣を着せぬ物言いで作品を批判したり、出版の約束を反故にするなどして作家たちから恨みをかっていた。容疑者は12人、アマチュア作家の集まり“チチェスター作家サークル”の面々に絞られた。無実を訴えるメンバーの身辺を、サークルの新入りであるボブ・ネイラーは調べ始めるが、まもなく第二、第三の犠牲者が…。ラヴゼイが円熟のトリックを施した、極上の本格ミステリ。
V・Iの恩師、母校バーサ・パーマー高校女子バスケット部のマクファーレン・コーチの依頼が、事の発端だった。V・Iが故郷サウス・シカゴを抜け出せたのは、彼女のお陰だったのだ。不治の病を得てしまった恩師に替わり、渋々ながら母校で臨時コーチをつとめることになるV・Iは、久しぶりにサウス・シカゴに足を踏み入れた。昔と変わらない故郷の窮乏ぶりに、心が痛む。女子生徒の半分は最上級生になるまで妊娠し、多くはそのまま地元の薄給の仕事につき、同じく薄給の男と家庭を持ち、またしても同じ境遇に子供たちを送り出すのだ。現在に希望はなく、未来にも光は見えない。そんな生徒たちの一人から、彼女の母親が勤める町工場が悪質ないやがらせを受けていると相談され、V・Iはまたしても事件の渦中へと踏みこんでゆくことになる。一方で寄付の依頼に行った地元の大企業でも事件の臭いを嗅ぎつけるが…。頼まれれば嫌とは言えず、危険も厭わずに体を張ってしまう、V・I・ウォーショースキーの真骨頂。ミステリの世界を超えて頂点に君臨する、サラ・パレツキーの最新作。
恋人のモレルがアフガンへ取材にいくことになり、心中穏やかでないわたしは、保険金詐欺事件の調査依頼を受けた。どうということもない依頼に思えたが、保険代理店の店主が殺され、事件は意外な展開に。同じころ、ホロコースト体験者を名乗るひとりの男の登場に、親友の女医ロティは激しく動揺する。彼女が封印した過去に関係があるようなのだが…?現代女性の生きざまを描く、V・I・ウォーショースキー・シリーズ。
わたしが調査する保険金詐欺事件と、シカゴを連日にぎわす過激な政治運動との関連が明らかになってきた。一方ホロコーストの生き残りだという男ラドブーカに振り回されるロティは、わたしの心配をよそに、事情を語ることをかたくなに拒む。やがて、別々に見えたふたつの出来事が奇妙に絡み合いはじめ…苦い過去ゆえに心を閉ざすロティと、彼女を救おうと奔走するV・Iの女の友情が感動を呼ぶ、パレツキー入魂の力作。
家族連れや若者たちでにぎわうのどかな浜辺。その中に人目をひく赤毛の女性が独りいた。彼女はおもむろに寝そべり、くつろぎ始めた。そして、いつのまにか彼女は首を絞められて息絶えていた。周りには海水浴客が大勢いたにもかかわらず目撃情報は皆無で、犯人の手がかりは波に洗われてしまい、捜査は暗礁に乗り上げた。しかし、ダイヤモンド警視は地道な調査のすえ、女性が犯罪心理分析官(プロファイラー)だということをつきとめる。彼女は警察に協力し、殺人犯の正体を暴こうとしていた。その犯行とは、人一人を殺害し、現場に暗く情念的なコールリッジの詩の一節を残してゆくという不気味なものだった。ダイヤモンドは殺人犯の行方を追うが、まもなく次の殺人予告が…。ダイヤモンド警視と異常殺人鬼の熾烈な駆け引きを描き出したシリーズ最新作。
NYを襲った同時多発テロは、アメリカ国民に深い傷跡を残した。そう、わたしの心にも。恋人でジャーナリストのモレルがアフガン取材に出て戻ってこないのだ。わたしは何度も帰国を促したが、モレルは「きみのほうこそ、もっと悲惨な状況をくぐり抜けてきたじゃないか」といって取り合ってくれない。募る不安から、わたしはより熱心に仕事に打ち込むようになった。そんな矢先、得意客のグレアムから依頼があり、わたしは飛びついた。なんでも、彼の母親が以前住んでいた邸宅に不法侵入者の気配があるので調べてほしいという。さっそく訪れた無人のはずの邸には、なぜか少女の姿が。わたしは話をしようと追いかけたが、足を滑らせて庭の池に落ちてしまった。必死で水草を掴もうとして手にしたのは、なんと死んだ男性の手。警察によれば、その男性は黒人ジャーナリストだという。だが、白人が支配する高級住宅地担当の保安官は面倒をさけるため、自殺の線で処理しようとした。そんなのは納得がいかないし、逃げた少女のことも気にかかる。わたしの闘いがはじまった!シカゴの女性探偵V・Iがポスト9・11のアメリカを駆ける。ヒロイン・ハードボイルドの頂点を極めた著者が贈る、V・I・ウォーショースキー・シリーズ最新傑作。
頭部を撃ち抜かれ息絶えた、愛する妻ステファニーの無惨な姿。それが現場に急行したバース署殺人捜査班ピーター・ダイヤモンド警視が直面したものだった。一体なぜ、彼女が殺されなければならないのか?長年連れ添ってきた妻を襲った、あまりに突然の悲劇に絶句し、立ちすくむダイヤモンド。同僚たちはただ遠巻きに見守ることしかできなかった。やがて葬儀も終わり、犯人逮捕に全力を尽くす決意をしたダイヤモンドだったが、被害者の夫が正式な捜査に参加を許されるはずもなく、たった一人で調査を開始する。だがそんな時、ダイヤモンドは、警察の捜査を統括するマガーヴィ主任警部に呼び出され、取調室へと連行される。彼に妻殺しの嫌疑がかけられているのだ。アリバイを追及されたダイヤモンドは激昂し、席を立つ。だが、殺害に使われた可能性のあるスミス&ウェッスンが自宅の庭から発見され、彼の立場は急速に悪化していく…。報復のための罠か?陰謀なのか?哀しみに震えるピーター・ダイヤモンド警視は一人の男として、最悪の事件に立ち向かう。衝撃のシリーズ第7弾。
突然、邸内は真っ暗になった。南米のある小国の副大統領官邸がテロリストに占拠された。折りしも、工場誘致のために日本の大手企業社長の誕生パーティが開かれており、出席者は人質となった。オペラ好きな主賓のために招ばれた世界的歌手のロクサーヌ・コスも、各国の要人たちも。幽閉生活が続くうち、人々は奇妙な安らぎを覚えていく。金と名誉を求めるばかりが人生ではないと気づいたのだ。テロリストたちも、実際は貧しい家の子どもだった。知的な大人たちと接して初めて、この世には美しい世界があることを知っていく。やがて、ロクサーヌの歌をきっかけに、人質とテロリストは心を通わせていく。首謀者までが人質に心を開き、官邸には牧歌的な時間が流れるようになる。だが、この平穏な日々が永遠に続くはずはなかった…。人間の根源的な愛とは何かを問いかけるオレンジ小説賞、PEN/フォークナー賞受賞作。
恋人のノンフィクション作家モレルのアフガン行きが決まり、憂鬱な日々を送るわたしのもとに、黒人労働者のサマーズから保険金詐欺の調査依頼がきた。また同じ頃、シカゴではホロコーストについて話し合う会議が開催されていたが、そこでスピーチをしたラドブーカという男性の名前を聞いて、親友の女医ロティが失神してしまう。彼女の過去と関わりがあるらしいのだが、何を訊いてもいっこうに答えてくれない。彼女を助けたい一心でわたしはラドブーカを調べはじめるが、その直後、まるで調査を妨害するようにわたしを中傷するビラが街頭でばらまかれた。さらにサマーズの保険を扱った代理店の店主が殺され、ロティが忽然と姿を消す。わたしは二つの事件の意外な結びつきに気づくが、そのせいで身近な人間を危険に晒すことに。事件は混迷を極め、真相を追うわたしの前に事件に関わる人々の苦く哀しい過去が浮かび上がる。過去の亡霊に悩む親友のために奔走するV・Iの友情が深い感動を呼ぶ大作。英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)に輝く著者が贈る、女性探偵V・I・ウォーショースキー・シリーズ第10弾。
フランス革命から6年を経た1795年のロンドン。街中では、王制復活をめざす貴族やその運動を阻止しようとする共和国のスパイが暗躍していた。そんななかで、赤毛の娼婦ばかりを狙った絞殺事件が相次ぐ。内務省の役人ジョナサンは、その手口から、犯人が1年前に愛娘エリーを殺したのと同一人物だと確信し、とり憑かれたように一人調査に没頭していた。その一方で、革命後のフランスからイギリスに入り込んだスパイの監視という本務においても、フランスの天文学者団体を隠れ蓑にして共和国政府との秘密文書がやりとりされているという情報を入手。真相を探るために、天文学者である異父兄のアレグザンダーを利用することを思いつく。ジョナサンは、さっそくフランスからの逃亡貴族で天文学を研究する美しい姉弟の豪邸に彼を差し向けてみるが、どうやら、屋敷に出入りする人物のなかに、共和国政府側のスパイや連続殺人鬼がひそんでいることが判明する…。娼婦殺し、天文学、暗号解読-絢爛たる物語世界が展開する、衒学的サスペンスの逸品。
40代を迎えたわたしは、世界の果てにどれだけ近づいているのか?気が滅入りがちなわたしを動揺させる新たな出来事が、降ってわいた。同世代の友人で新聞記者のマリ・ライアスンが、テレビ・リポーターに転身したのだ。記者として長年闘ってきたマリも、金の力に屈してしまうのか?マリの転身を祝うためパーティに出席した帰り、わたしは道に倒れていた女性を危うく轢きそうになった。その女性は重傷を負って倒れており、まもなく病院で死亡した。やがてその女性がニコラという脱獄囚だと判明するが、その直後、解剖する予定だったニコラの遺体が、何者かに持ち去られるという事件が起きた。わたしはニコラがメイドをしていた大手警備会社社長の家を訪ね、彼女が罠にはめられた疑いを抱く。なおもニコラが投獄された真相を探るうち、様々な妨害の手が延び、ついにわたしは誘拐容疑の濡れ衣を着せられ、刑務所へと!シカゴの女性探偵V・I・ウォーショースキー、6年ぶりに登場。生涯でもっとも苛酷な日々のなか、プロの探偵としての誇りを賭けたV・Iがすべてを投げうって真実を追う。
観光地として賑わう、古代遺跡のローマ浴場の地下室で、白骨化した人間の手が発見された。一報を聞きつけた警視ピーター・ダイヤモンドは、骨の身元を特定すべく捜査を開始する。だが、くだんの地下室の番地に、『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリーの自宅がかつてあったという事実が浮上し、捜査は混乱に陥った。この偶然の一致にマスコミが飛びつき、「人骨は怪物の犠牲者なのか?」などとバースの町に流言飛語が飛びかう実態となってしまったのだ。時同じくして、女性の骨董商が他殺とおぼしき水死体となって発見された。事件担当の主任警部ウィグフルは、容疑者の尾行を単独で開始するが、何者かに殴打され、生死の境をさまよう意識不明の重体に!同僚に代わってこの事件の捜査も担うことになったダイヤモンドは骨董商の身辺を探り、幻想的な画風の絵画が殺人事件当夜に取り引きされていたことを突きとめる。しかも、その不気味な絵のモチーフは『フランケンシュタイン』の一場面を意味していた…。不可解な繋がりをみせる二つの事件から、ダイヤモンドが辿りついた犯人像とは?ゴシック的な香り漂う怪奇な事件に、ピーター・ダイヤモンド警視が熱き刑事魂で立ち向かうシリーズ第六弾。
コロラドの牧場主アティカスは、メキシコ・カリブ海岸に住む次男・スコットの突然の自殺の報を聞き、単身現地へ飛ぶ。葬儀をすませ、息子とかかわった人物や遺品と接するうち、確信に満ちた疑問がー他殺!?かつて妻を死に追いやった息子との心の溝を越え、力強い愛情で真相を追う父の苦闘を描くサスペンス。
病院の駐車場で倒れているところを発見された若い女は、記憶をすっかり失っていた。身元もわからぬまま、とりあえず無料宿泊所へ収容された彼女は、そこで大女のホームレスと知り合い、彼女の励ましと協力を得て、自らの失われた過去を捜しはじめる。わずかな手がかりを追い、自分が記憶を失った経緯を辿るうち、二人の身辺に怪しげな人物がうろつきはじめた…。「花の街」バースは平和だった。殺人捜査班を率いるダイヤモンド警視も、あまりの退屈さに体調を崩す始末。見かねた上司は、本来は管轄外の自殺事件の調査をダイヤモンドに割り振った。自分の農場で、ショットガンで頭を吹き飛ばした老農夫の事件。市内の由緒あるアパートから身を投げた、身元不明の女の事件。どちらも平凡な仕事に見えたが、百戦錬磨のダイヤモンドの目は、ある事実に引きつけられた。これは、ひょっとすると…。ダイヤモンド警視の刑事魂をくすぐる怪事件続々発生!快刀乱麻の名推理が解き明かす、驚天動地の真相とは。
かつて一世を風靡したオペラの花形歌手でありながら、今は酒に溺れ場末の酒場で歌うルイーザ。高名な外科医の祖父と優秀な弁護士の姉を持ち、そのコンプレックスゆえに家を飛び出したティーンエイジャーのマーラ。医療の理想と現実の狭間で苦悩する精神科の青年医師ヘクター。そして、駐車場脇の塀から聖母マリアが血の涙を流しているという妄想に取り憑かれたホームレスのマデリン-生まれも育ちもまったく違う四人の孤独な男女が街角で出会う時、シカゴの街を大きな感動で包みこむ奇跡が起こる…。V・I・ウォーショースキー・シリーズで人気のサラ・パレツキーが混迷の世紀末に贈る、愛と奇跡と感動のストーリー。