著者 : J・M・クッツェー
ノビージャの街を捨て、田舎町に逃れてきたダビード、シモン、イネス、そして犬のボリバル。シモンとイネスは農園に住み込みの仕事を見つけ、ダビードとボリバルもそこに暮らす。だが、もうじき7歳になるダビードの質問攻めにシモンは辟易していた。ダビードもシモンの返答に満足せず…。ダビードは、農園のオーナーである三姉妹の勧めで、ダンスアカデミーに入学する。少年はシモンとの距離を置くために寄宿生になりたいと言い出すが…。『イエスの幼子時代』続篇。
「人間のモラル」の底を描く、余韻に富んだ最新作。欲望すること。歳をとること。人間であること。円熟期にある作家が、今どうしても伝えたいこと。ノーベル賞作家が、これまで自明とされてきた近代的な価値観の根底を問い、時にシニカルな、時にコミカルな筆致で開く新境地。英語オリジナル版に先駆け贈る、極上の7つの物語。
ヴェトナム戦争末期、プロパガンダを練るエリート青年。18世紀、南部アフリカで植民地の拡大に携わる白人の男。ふたりに取りつく妄想と狂気を、驚くべき力業で描き取る。人間心理に鋭いメスを入れ、数々の傑作を生みだしたノーベル賞作家J.M.クッツェー。そのすべては、ここからはじまる。
初老の男が5歳の少年の母親を捜している。2人に血の繋がりはなく、移民船で出会ったばかりだ。彼らが向かうのは過去を捨てた人々が暮らす街。そこでは生活が保障されるものの厳しい規則に従わねばならない。男も新たな名前と経歴を得てひとりで気ままに生きるはずだったが、少年の母親を捜し、性愛の相手を求めるうちに街の闇に踏み込んでゆくー。人と人との繋がりをアイロニカルに問う、ノーベル文学賞作家の傑作長篇。
静かな辺境の町に、二十数年ものあいだ民政官を勤めてきた初老の男「私」がいる。暇なときには町はずれの遺跡を発掘している。そこへ首都から、帝国の「寝ずの番」を任ずる第三局のジョル大佐がやってくる。彼がもたらしたのは、夷狄(野蛮人)が攻めてくるという噂と、凄惨な拷問であった。「私」は拷問を受けて両足が捻れた夷狄の少女に魅入られ身辺に置くが、やがて「私」も夷狄と通じていると疑いをかけられ拷問に…。