幻の百花双瞳
取調室で刑事の執拗な追及を受けながら、私は2度と百花双瞳はつくるまいと思った。そもそも14歳で広州から神戸の華僑宅に奉公に出され、主人から「あんなに美味いものはなかった」と聞かされたのを職人気質の料理長に洩らしたのが始まりだった。しかし、彼に手伝わされて料理法も材料も分かぬまも分らぬまの名点心が、こんなにも恐ろしい結末を呼ぶことになるとは…。人間の宿業に迫る傑作推理集。
取調室で刑事の執拗な追及を受けながら、私は2度と百花双瞳はつくるまいと思った。そもそも14歳で広州から神戸の華僑宅に奉公に出され、主人から「あんなに美味いものはなかった」と聞かされたのを職人気質の料理長に洩らしたのが始まりだった。しかし、彼に手伝わされて料理法も材料も分かぬまも分らぬまの名点心が、こんなにも恐ろしい結末を呼ぶことになるとは…。人間の宿業に迫る傑作推理集。