ビサンツの鷲(3)
スルターニアはイル・ハーン朝の時代に夏の宮廷が置かれた北ペルシャの美しい都である。二人の従者を連れた男は、スークの一遇にある奴隷商人からトルコ系の美少年を買い求めた。それより前、男はエルブルズ山脈の鋭い稜線に落日がかかる二基の小塔に影を落していた。塔は白茶けた髑髏で覆われて暗い眼窩に鬼火が点っていた。ナービルと呼ばれた男は尊師の命を受けて、奴隷を買い付けにやって来たのだ。彼の眼にはティムールへの激しい憎悪が燃えていた。その頃、ビザンツの鷲アレクシオスの一行も都に旅装を解いていた。