黄泉津比良坂、暗夜行路(あんやのみちゆき)
ぐおぉーんと、寂寥たる闇を震わせて、不気味な鐘の響きが山中を貫いた。絶対、鳴らないといわれ、もし鳴るようなことがあれば『この世が終わる』と伝えられた不鳴鐘が突然、大音声で鳴り響いたのだ。鐘堂に駆けつけた天主家の人々の前に、また新たなる悲劇の幕が上がった。着物を着た人間の膝から下の部分が釣り鐘の中からぶら下がっている。庭師の秀夫だった。突然吉原より呼び出された朱雀十五、因縁の地、神岡山の聖地、天主家の館に再度、乗り込むことに…。いよいよ、事件は因習と血塗れの大迷宮に。全ての謎は解かれるのか。『黄泉津比良坂、血祭りの館』完結篇。