出版社 : ポプラ社
もう、何をする気にもなれないー芳枝はひとり、暗い家に閉じこもっていた。だが、その扉を叩く見知らぬ男の子があらわれる。その子は太陽を探しに行くのだというー。「あなたは、だれなの?」太陽が消えた闇の世界で、子どもが大人を導いていく。代表作『あん』が23言語に翻訳され、世界のリテラシーエージェントが注目するドリアン助川の希望の書。
母を亡くした小学校六年生の鳴海翔は、父・英一と離れて母方の実家に預けられた。さびしさをこらえて新しい暮らしに慣れようとするが、その町には一筋縄ではいかない大人の世界があったー。万引きを奨励する母と暮らす大也、狭い家のなかで暴れる父との関係に苦しむ美波、そして親から離れて暮らす翔。大人たちの身勝手さにもみくちゃにされながらも、三人はしだいに心を近づけていく。過酷な現実の波をかぶりながら不思議な明るさを失わない子どもたちが明日へ踏み出していく勇気の物語。第12回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作。
丘晴人は、君立市君乃町に住む中学2年生。両親が「有限会社オカリナ探偵局」という探偵事務所を営んでいるため、町の有象無象の面倒事や困り事が舞い込む。両親の手伝いで事件に立ち会う中で、晴人が目にした数々の不思議な出来事。これって、幽霊がやったとしか考えられないー!事件解決の糸口を見いだせない晴人がひょんなことから出会ったのは、廃墟に住む、「博士」と名乗る謎の女性。「ひらめき研究所」の看板を掲げ、謎の発明に日夜没頭する彼女に事件を相談するのだがー。『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、連作短編ミステリー。
母の死をきっかけに生きる意味を見いだせなくなった槐は、職も失い、川越で染織工房を営む叔母の家に居候していた。そこに、水に映る風景画が人気の女性画家・未都の転落死事件に巻き込まれ、心を閉ざしていた従兄弟の綸も同居することに。藍染めの青い糸に魅了された綸は次第に染織にのめり込んでいく。ある日、槐の前に不審な男が現れ、綸が未都の最後の言葉を知っているはずだと言う。死の謎を探りながら、槐は「なぜ生き続けなければならないのか」という問いと向き合っていくー。
人と暮らすって不自由で息苦しくて、でも時々たまらなく愛おしい。カップル、父娘、隣人同士。5つの生活を通して、誰もが記憶のかたすみに持つ暮らしの中の悲喜交交を、優しく掬い上げた連作短編集。
高校二年生の寿美子には、れいちゃんという幼なじみの友人がいる。同じ高校に進学し通学を共にしているふたりだが、過去に複雑な事情を持つれいちゃんは、可憐な容姿とは裏腹に、他人の容姿を貶めたり、陰口を撒き散らすことで他人とコミュニケーションをとる少女だった。そんな態度に違和感を覚え始める寿美子だが、やがて彼女の吐く毒は自分自身にも及んでいるのではないかと思い至りー。互いを傷つけ合いながらも一緒にいる、思春期の複雑な友人関係。業界注目の新鋭・砂村かいりが贈る、一言では片づけられない、少女同士の関係性に切り込んだ青春小説。
京都東山の住宅街に佇む瀟洒な洋館「東山邸」には、年の離れた小鳥遊姉妹ー葉月と美沙が暮らす。葉月は人気脚本家だったが、批判を受け、思うように書けないでいた。ある夜、祇園の小料理屋で駆け出し俳優の鈴木英輔の出演ドラマを酷評していると、お忍びで来ていた英輔本人と遭遇。「あなたの先生になってあげる」と啖呵をきった葉月は英輔と京都を舞台に奔走し、やがてある事件が起きて…。一緒に英輔を“推し”ながら、気づけば仲間に囲まれ、ラストは温かな涙がこぼれる傑作長編!
地方都市の寂れた町にある葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れる中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦…。死を見つめることで、自分らしく生きることへの葛藤と決意を力強く描きだす、本屋大賞受賞作家、新たな代表作!
世界有数の頭脳スポーツでありながら日本ではまだ競技人口の少ないチェス。その魅力にとりつかれた、4人の若者たち。彼らは、己のすべてをかけて盤上の戦いに挑む。命懸けの勝負の行方はー!?
中学一年の薗村海斗は、最近は学校に来なくなってしまっている同級生・桶屋太市、同じく同級生の女子・烏丸未夢と、オンラインゲームを通して交流を深めていた。ある日三人は、廃園になった遊園地“ハピネスランド”で撮影されたと思われるある動画を見てしまい、その動画が一体何なのかを突き止めるため、ハピネスランドに侵入することに…。思わぬ方向へ展開していく事件を追いながら、海斗たちは少しずつ真実に近づいていくー。少年少女たちの瑞々しい感情と友情を描き出す傑作青春ミステリが誕生!
東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。
もうわかってるの。自分がいやな人間だってことも、ダメな人間だってことも。自分のことをそんなふうに思っていた「泉」。祖母に預けられた小学生時代から、中学、高校、大人になるまで、変えられない自分がいた。生きていくこと、そのありのまま輝きがついに堰を切って溢れ出す。一人を見つめて描かれたみんなの人生の物語。
高校生の木島道歩は、尿路結石で入院していた病院で16歳の誕生日を迎えた。またみんなに馬鹿にされる…。そんな木島に同じ年頃の少女が声をかけてきた。「ねえ、君にお願いがあるんだ」-。不治の病とたたかう綿野、親のプレッシャーで暴走する矢野、ワケアリイケメンの斎藤ら、不遇の高校生たちが「生きる証」を打ち立てようと、嘲笑と裏切りを突き抜けて進んでいく。第11回ポプラ社小説新人賞受賞作。
記憶を失ったまま、薔薇の花畑で目覚めた少女。視界の先には白い小城ーそこは、物語に登場するキャラクターたちが暮らす、“物語管理局”。自分の正体を突き止めるため、少女は「王子」と呼ばれる少年と「マッチ売りの少女」「裸の王様」など物語の世界へと飛び込むが…?読者から募集した物語をカンザキイオリが楽曲化し、「それを世界と言うんだね」(歌・花譜)を綾崎隼が小説にした傑作!!
イルミネーションに飾られた小さなサーカステントにキッチンカー、お腹がぐうと鳴るいい香り。それらに出会ったあなたは運がいい。そこは期間限定で現れる幻のビストロ「つくし」。猫を思わせるギャルソンとシロクマのようなシェフが、あなただけのために作るスペシャリテで迎えてくれる場所だ。キッチンカーの赴くままに旅をする「つくし」だが、きまって芸術のある場所に現れる。ピアノの演奏が聞こえる野外劇場、絵画が飾られたマルシェ、映画が上映されている砂浜、能楽堂がある広場…。
小学五年生の晶と高校生の達は、仲良しな兄弟。物知りで絵が上手い達は、晶にとって最高の兄ちゃんだが、世間から見ると普通じゃないらしい。晶以外の人とのコミュニケーションが苦手で不登校だし、集中すると走り出してしまう癖があるから。「人と違うこと」の苦しさ、素晴らしさを描いた物語。第11回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作。
ミステリ小説みたいな事件なんて、現実にはそうそう起きたりしない。世に起きる事件のほとんどは一般的な事件であり、優秀な警察によって早急に解決されていく。だが、しかし。この平和な日本でも起きるのだ。密室殺人が。怪盗による犯行予告が。そうしたやっかいな事件は並の警察官では歯が立たない。いわゆる「名探偵」の力が必要だが、毎回民間人に協力を仰ぐのも警察の名折れである。それならば警察組織にしてしまえばいい!こうして生まれたのが、警察庁特殊例外事案専従捜査課ー略称「特専課」-通称「探偵課」。探偵課に所属する名探偵たちは、例にもれず全員めんどくさい。事件が起きると召集され、ずかずかと現場に現れて華麗に解決する。そんな愉快な探偵課に、警察庁に入庁したばかりの新人・木島壮介が配属されてしまい…
惣菜と珈琲のお店「Δ」を営むヒロは、晴太、中学三年生の蒼と、きょうだい三人だけで暮らしていた。ある日、蒼は卒業したら家を出ると言い始める。ヒロは激しく反発してしまうのだが、三人は複雑な事情を抱えていたー。第11回ポプラ社小説新人賞受賞作。