出版社 : 二見書房
大きな体で大酒飲みの荒くれ者で、長屋や近隣の住民たちから嫌われていた通称「らくだ」。ある日、らくだの兄貴分、半次が長屋を訪ねると、らくだが死んでいた。半次はその弔いの金を工面するため、たまたま通りかかったくず屋の久六を呼び止める。らくだの死を知らされ、驚く久六だったが、半次に脅され、長屋の月番や大家に金品要求の言伝てを行うはめに。出し渋るところには、らくだの死骸を運んで「かんかんのう」を踊らせ、ついには香典や物品をせしめる。やがて、久六はらくだの母親のもとに使いに出かけるがー複雑な滑稽咄を人情咄として再構成、シリーズ第3弾!
浪人の萩原新三郎は、旗本飯島平左衛門の娘、お露と知り合って惹かれあうが、会えない日々が続き、ついには、お露は恋焦がれ死に、女中のお米も亡くなってしまった。それから夜ごと、新三郎のもとに通ってくるお米とお露の幽霊。経と如来像、札を授けられた新三郎はお露から身を守れたかのように見えたが、下働きの伴蔵の手引きにより、新三郎はお露に取り殺されてしまう。しかし、そこには複雑な因縁と企てがあったのだー
十五歳の寒九郎が江戸へ逃れて三年。津軽藩士の父は切腹、母は後追いの寒九郎は、叔母が嫁いだ旗本武田作之介の後見で文武の修行に励んでいた。一月十六日の奉納仕合いを前に奇妙な噂が流れた。勝ち抜いた剣士に御上から恐るべき密命が下されるという。かつて寒九郎の祖父らへの密命と同様に…。その祖父は今、津軽藩からの刺客を逃れて魔界白神山地に隠れていると判明。
五年前に『守田屋』のおそめさんを巡って私の兄と諍い、誤って死なせて逃亡し、おそめさんの許嫁・清吉さんが戻ってくるのを、父が仇をとろうと狙っています。父を“人殺し”にしないように清吉さんを護ってくださいー。田宮流抜刀術の達人で三味線の名手・矢内栄次郎のもとを訪れた『江戸屋』の娘お糸が頼み込んだ。窮地の清吉を護りつつ、栄次郎は事件の謎解きに挑む。
将軍は九代家重から十代家治へと受け継がれた。来年は家康公百五十回忌の日光社参。その莫大な費用を補うべく、幕府は中山道沿いの各村に過酷な税“増助郷”を迫った。朝鮮通信使来日に続く“酷税”に百姓は決起。御上意といえども抗するしかない。やらなきゃ飢え死にしかない。中山道の各村から鋤鍬を手に十万人を超える百姓が江戸城へと進んでいく。御庭番の宮地加門は…。
高校時代にフラれ、それを引きずってきた男は今やIT企業社長となった。そこにその女性から借金の申し入れが。男はここぞとばかりに体による代償を求めるが、実は裏が(「想定外の人妻」)。人妻の主任が、純情そうな部下の男を誘惑し、筆下ろしを行なうが意外な展開に(「童貞の誘惑」)ほか、夫以外の男と人妻の午後の秘密をエロティックに描いた傑作官能集!
ブルーはある目的を持って潜り込んだバーで露出度の高いウェイトレスの制服に身を包み、男に挨拶をした。シン・ブレッケンリッジー7歳のとき、目の前で私の母を殺害した男の息子だ。あれ以来、復讐することだけを目的に生きてきたが、そのためにはシンを誘惑し、私の虜にしてブレッケンリッジ家に近づくのだ。だが計画どおりデートをし、シンに身を任せて初めての悦びを知ると、もう何も考えられなくなった。憎き相手を本気で愛してしまったブルーに、運命はさらなる残酷な罠を用意していて…
ライリーは15年前、姉を目の前で誘拐され、その罪悪感からFBIのプロファイラーとなって今も姉の行方を追い続けている。当時、シンギング・リヴァーという町でも酷似した事件が起きていて、記録を調べにやってきたライリーはシールズ隊員のセインと恋に落ちたが、仕事のために別離を余儀なくされていた。一年が経ち、セインからの連絡にライリーは再びシンギング・リヴァーに向かう。今度はセインの姉が誘拐されたのだという。調査を続けるうち、小さな町の抱える驚きの秘密が明らかになっていき…
表向きは洋食店、裏では藩主須賀原家の間諜として暗中飛躍する秋月と山蔭に拾われ「しのびパーラー」で働く兎目。彼らの正体を知った兎目は二人の仕事を手伝いたいと願い、渋る山蔭を説き伏せる形で「草」の一員となる。そんなある日、雇い主の周良が持ち込んできた仕事は勲功華族岩間子爵の長男・寿元の素行調査。寿元の屋敷に迎えられた行儀見習いの少女たちが、次々と行方不明になっているというのだがー。
暗殺者の凶刃に倒れ六十年の生涯を閉じたオーストリア皇妃エリザベート。ところが、一回目の人生の記憶そのままに、六歳の少女時代へ逆戻り!?二度と不幸な人生は歩みたくないと、運命の分岐点だったフランツ・ヨーゼフとの出会いを回避し、見初められることのないようガリ勉少女に変貌を遂げるのだが…。転生エリザベートと堅物皇帝フランツ・ヨーゼフの二度目の出会いと恋を描く、甘く瑞々しい歴史ファンタジー。
異国情緒あふれる街、神戸市北野。異人館街の一角に店を構える『ステラ・アルカ』は、悩みを抱える人以外お断りの、ちょっと不思議な紅茶店。とある事情により店を訪れた千優を出迎えたのは、美麗だが謎めいた双子・響と奏。無表情な兄と常に笑顔の弟が織りなす、心身ともにボロボロな千優だけのための、温かく滋味あふれる料理と紅茶ーすっかり魅了され客として通うも、思いがけず店で働かないかと打診された千優は…。
八代将軍吉宗のもとに薩摩藩主・島津継豊から“黄金の瓢箪”が届けられた。貨幣改鋳を担う金座の後藤庄三郎に、琉球より招いた金細工師と舞姫を送り込んだが、小判鍛造のかたわら、黄金の製品も造りだしているという。将軍の影目付・柳生俊平は、吉宗から直々に、金座の後藤庄三郎探索を命じられ、探っていくうちに…。海賊大名も絡んだ一大疑惑が浮上してきた。
両国広小路の芝居小屋で、席亭と座長が殺される。一緒にいた座長の娘は一命を取り留めるが、記憶を失ってしまう。超大富豪「萬店屋」の主でもある、新内流しの弁天太夫・鉄五郎は、自分の不用意な一言で無実の罪を着せられた浪人が磔にされると聞き、下手人探しに乗り出す。鉄五郎は刑場に向かう途路に咎人奪取を企て、さらに真犯人暴露の意趣返しの大芝居を打つ!
崖から落ちたはずの文也は、なぜか一命をとりとめた。だが、運命が一転する。好意を抱いていた社長令嬢を抱けることになったのだ。それだけではない、実はあの事故を機に不思議な能力を身につけたようなのだった。それを彼女のため、世の中のため、と駆使する彼だったが、それ以上に、ベッドでの行為にも十二分に活用しー。超人気作家による圧巻の官能エンタメ!
無名作家ローウェンのもとに、ベストセラー作家ヴェリティの共著者として大人気シリーズの執筆をしてほしいとの依頼が舞い込んだ。ヴェリティは少し前に事故に遭い、今はほぼ寝たきりだという。夢のようなオファーだけれど、疑念も浮かぶ。なぜ、この私に?だが顔を合わせたヴェリティの夫ジェレミーは魅力的な紳士で、熱心に口説かれるまま、彼らの家に住み込んで執筆することに同意してしまう。早速資料を整理していると、ヴェリティの自叙伝らしき紙の束を見つけるが、そこには驚愕の事実が…。
向坂勘十郎は群がる男たちを睨んだ。空色の小袖、草色の野袴、右手には十文字鑓を肩に担いでいる。六尺近い長身、豊かな髪を茶筅に結い、浅黒く日焼けしているが、鼻筋が通った男前だ。肩で風を切り、威風堂々、大股で歩く様は戦国の世の武芸者のようでもあった。寛永十二年、大坂落城から二十年、江戸の町には未だ戦国の気風が漂い、町のあちこちで争い事が絶えない。
評定所を震撼させる一大事が出来。蔵前の札差衆の訴状は、旗本と御家人に数年先の扶持米まで担保にした借金を重ねられ、堪りかねて手を引きたいとのことだった。この事態を収めたのが、江戸の商業界に君臨する大坂屋茂十郎。大きな野望を抱く茂十郎は、貧窮にあえぐ青年旗本に目を付けた。茂十郎の誘いに乗った青年旗本の許されざる行動はやがて目付筋の監視を招き…。