出版社 : 光文社
江戸時代の大坂は土佐堀川にかかる淀屋橋のたもとで、ぼろぼろの屋形船を住まいとする白鷺烏近。「ご無理ごもっとも始末処」の看板を掲げ、客が持ち込む無理難題を愉快な仲間とともに知恵で解決する男だ。わがままな殿様を懲らしめるため川の流れを逆にしたり、金持ちを長生きさせるためにいるはずのない人魚の肉を探し出したり、となんぎな依頼も白い鷺を黒い烏と言いくるめる烏近にかかれば、パッと解決。愉快、痛快な頓知の曲芸が、あっといわせる人情事件帖。
一生働ける場所が欲しい、金しか信じられないんだ。大義のためなら、家族も子供もどんな犠牲だって払ってやる。自分さえ良ければそれでいいんだよ。時代の流れを掴めば勝ち組さー破壊と創造に明け暮れた怒涛の六十四年間を、年代ごとに描き出す異色の作品集。関東大震災の傷跡、戦争と復興、高度経済成長と公害、マスメディアの台頭、バブル崩壊…。時代の熱と人間の脆さが生みだす怪談はかくも怖くて愛おしい。
一日1錠、採血8回。13日間、三食保証いたします。…ただし、決して誰も信じないでください。隔離生活を襲う得体の知れない事件の数々。治験が終わるまで島から出ることは許されない。狙われているのは被験者か病院か、それともこの島かー
警察学校を首席卒業の五十嵐いずみに課せられた仕事は、なぜか警視庁の一室での資料整理。地味な作業に彼女はふて腐れてばかりいた。しかしある日、パソコンの画面が発する光に包まれたいずみは、自分が一九八五年の署長室にいて、署長の身体に憑依していることに気づく。折しも署では、資料で目にしたばかりの未解決事件捜査の真っ最中。事態に狼狽えている間もなく、いずみは思いがけず、“一日署長”として、現場の最前線に赴くことになるのだった…!
豊かで美しい本州最北の地・津軽に生まれ、母に「大将軍になりなされ」と吹き込まれて育った餓鬼大将・弥四郎(後の津軽為信こと右京亮)。津軽を足がかりにしてのし上がり、天下に覇を唱えんと、仲間と共にあらゆる手管を用い版図を広げていく。しかしその頃中央では、豊臣秀吉が圧倒的な力で各地の大名をねじ伏せ始めていた…。北東北の勢力地図を一代で塗り替え、地元で今も「髭殿」と愛される津軽為信。彼の痛快な人生を魅力的に描いた傑作誕生!
「オリンピックに一緒に出ようね」幼なじみの神崎水葉との約束を胸に、アーティスティックスイミングにすべてをかける高校二年の陣内茜だが、練習中に大怪我を負う。挫折の日々のなか、茜はいつも独りぼっちの同級生・西島由愛と親しくなる。しかし、茜とのペアを復活させたい水葉は、二人の関係に嫉妬をー。手さぐりの青春を瑞々しく描く感動作!
それは、きらめく銀色の刃が、凄惨な切腹場を果敢ない幻影に包みこみ、誰もが息を呑んで言葉を失くし、切腹場の一切の物音がかき消えた、厳かにすら感じられる一瞬だった。十八歳の春、首斬人としての生業を継いだ男の極致。
小六の息子・颯太の授業参観で母校を訪れた新城幹太。学校での颯太は家とは別人のように活発で、幹太は動揺する。三十年前、自分がこのK小学校に転校してきた際に遭遇した奇妙な出来事を思い出したからだー「シェルター」。M小に異動してきた庄内真奈は、給与明細に「危険業務手当」として三十万円の支給が記載されていることに気づく。「危険業務」に思い当たるふしはなく同僚に聞いてみると、三年二組の誰かが「手のかかる」児童だとわかりー「危険業務手当」。保護者、教員、事務職員、PTA、校長ー学校に集う大人たちに起きた、子どもが知らない5つの奇談。
探偵には、1字の誤算もありえない。ワンセンテンスに隠されたまさかの謎を解け!!論理的対局。それは偶然耳にしたわずか1文・数十字をめぐる知の殴りあいだ。何の因果か今日もまた、結子は悪党のワンセンテンスを聴いてしまった。そこに秘められた恐るべき悪事よーそれをトボけたおっさん・司馬警視正にわからせ、重大事件を解決させてやらねば。だから結子は指し続ける。ロジックロジックの攻めの手を。彼女の指す一手ごとに暴かれる、悪魔宿るワンセンテンスの解釈とは。彼女が最後に証明する、驚天動地の犯罪計画とは。さてこの勝負、詰むや詰まざるや?
鎌倉の民宿に、ある家族が長逗留している。息を潜めるように暮らしているが、実はテレビでも特集されたことのある有名人たちらしい。病院で新生児の頃に子供を取り違えられた二組の家族が支え合い、共同生活を営んでいたことが注目されたのだ。それが、なぜいま隠れ住んでいるのか?原因は、予期せぬ殺人事件と、その驚くべき顛末にあった。彼らが平穏を取り戻すことは、不可能なように思えた。
「六つの迷宮入り凶悪事件の犯人を集めた。各人に与えられた武器で殺し合い、生き残った一人のみが解放される」女名探偵の死宮遊歩は迷宮牢で目を覚ます。姿を見せないゲームマスターは六つの未解決事件の犯人を集めたと言うが、ここにいるのは七人の男女。全員が「自分は潔白だ」と言い張るなか、一人また一人と殺害されてゆく。生きてここを出られるのは誰なのか?そしてゲームマスターの目的は?
日常から浮遊する、5つの奇妙な謎と解決。ドレスをズタズタにした犯人は、どこから来てどこへ逃げた?「幸せという小鳥たち、希望という鳴き声」。虫食いだらけの原稿を、前後の文章から推理して完全修復!?「フーダニット・リセプション名探偵粍島桁郎、虫に食われる」。夫は殺したはずなのに!なぜここに!?「動くはずのない死体」。超常的な力で殺人罪から逃れる男VS.熱血刑事「悪運が来たりて笛を吹く」。瞬間移動能力者が起こした密室殺人。読者への挑戦状付き!「ロックトルーム・ブギーマン」。
一九四九年、終戦から四年が経った東京。陸軍中野学校出身でかつて破壊工作員だった藤堂直樹は、歴史学者の守屋淳一郎と物理学者の和久田元から過去に時間を遡る手段を発見したと聞かされる。さらに二人は直樹に思いがけない依頼をしてきたー「過去に戻って、戦争を始めた者たちを排除して欲しい」。-目指すは満州事変の阻止。未来は、本当に変わるのか?
権力の座を望む長女、その姉を恐れる次女、父親が気がかりな三女。日本一の家具店を一代で築いた“家具王”宝田壮一だが、寄る年波には勝てず、また後継者選びにも悩んでいた。三姉妹も役員だが、それぞれの強い思いが不協和音となり、家族間に暗い影を落とす。一族を取り囲む社員たちに加えて投資ファンドの策謀が絡み、影は濃く、深くなるばかり。宝田家具には“破滅”への道しかないのか!?家族の“絆”は、幻想にすぎなかった。『リア王』を下敷きに、古くて新しい家族の悲劇を描いた意欲作。
“どんでん返しの帝王”が描く大人気検察ミステリー、待望の第3弾!南海電鉄岸和田駅にて、無差別殺人事件が発生。7名を殺害した笹清政市(32)は、自らを失うもののなにもない“無敵の人”と称する。ネット上で笹清をロスジェネ世代の被害者だと擁護する声があがるなか、大阪地検で郵送物が爆発、6名が重軽傷を負った。被疑者“ロスト・ルサンチマン”は笹清の釈放を求める犯行声明を出す。事件を担当する大阪地検の不破俊太郎一級検事は、調査中に次の爆発に巻き込まれー連続爆破事件は止められるのか?“ロスト・ルサンチマン”の真の目的は何なのか?
上高地の横尾山荘に宿泊中の女が失踪した。翌朝、同じ山荘近辺でテント泊をしていた男が刺殺体で発見される。二つの事件に関連性はあるのか?松本署の道原伝吉は複数の可能性を視野に入れ、捜査を開始する。その過程で、女の交際相手の許へ赴くが、直後に蒸発。時を同じくして、七里ヶ浜で事件の関係者が殺された。不気味に連なり続ける事件を食い止めるため、道原は江の島に向かうが…。
白い死神に翻弄される人々になす術はないのか!?漁師の原因不明の失踪が、発端だった。巨大なホホジロザメが目撃されるようになっても、一時的に迷い込んだだけだろうと誰もが考えた。しかし彼らは、いつまでたっても外海に去ることはなかった。事態は悪化の一途を辿る。追い出せないのか。駆除するしか、ないのか。そもそも、そんなことはできるのか!?平和な海を取り戻すべく、決死の掃討作戦が始まろうとしていた…。
父が病に倒れた。進行は凄まじい速さだった。家族と自分の今までとこれからを考える暇も与えてくれなかった。きっと誰もに訪れる。でも、会えなくなるのはやっぱり寂しい。別れの日を前にした人々の思いが胸を打つ、感動の傑作。
なぜ自殺が続くのか?終の棲家で信じるべきは何なのか?秘密を暴く快感と、アッと驚く結末が読者を待ち受ける!常駐看護師の冬木栗子が勤める老人ホーム「山南涼水園」で、男性入居者が滝壼に飛び込んだ。彼は溌溂と過ごしていたはずなのに…。自責の念に駆られた栗子が調べ始めると、遺産問題、派閥争い、横恋慕…と、施設内部を蝕む黒い秘密が露わになっていく。そして、彼女がいよいよ不安を募らせた矢先、さらなる入居者の“自殺”が発生してしまいー。『交換殺人はいかが?』『消えた断章』で活躍した元刑事・君原継雄が主人公を導く最新作。