出版社 : 国書刊行会
現代文学の新星、乗代雄介が15年以上にわたり書き継いだブログを著者自選・全面改稿のうえ書籍化!書き下ろし小説、『虫麻呂雑記』(140枚)を併録。
地上から人が消え、最後の一人として生き残ったケイト。彼女はアメリカのとある海辺の家で暮らしながら、終末世界での日常生活のこと、日々考えたとりとめのないこと、家族と暮らした過去のこと、生存者を探しながら放置された自動車を乗り継いで世界中の美術館を旅して訪ねたこと、ギリシアを訪ねて神話世界に思いを巡らせたことなどを、タイプライターで書き続ける。彼女はほぼずっと孤独だった。そして時々、道に伝言を残していた…ジョイスやベケットの系譜に連なる革新的作家デイヴィッド・マークソンの代表作にして、読む人の心を動揺させ、唯一無二のきらめきを放つ、息をのむほど知的で美しい“アメリカ実験小説の最高到達点”。
赤毛の青年ジェラルドが先祖ドム・マニュエルのロマンスを執筆中、悪霊が現われ、お前の肉体に乗り移って現世を引き受けてやろうと言う。申し出を受け入れたジェラルドは銀の馬カルキに跨り、彼方の都アンタンに向かった。あらゆる神の終着地である彼の地を統べる文献学匠になり代わり、その王座に座るつもりなのだ。その途上、不思議な鏡の魔力で、神話的人物、英雄たちへの転生を体験したジェラルドは、至上神としての己の運命を確信するのだがー文学の古典や歴史、神話の自在な変奏により展開される“造物主/詩人への悲歌”。
信仰に基づく理想的な社会の建設を目指して新天地に渡ったピューリタンたち。白人とインディアン、開拓者たちと滅びゆきし者の運命は激しく交錯する。新世代の若者たちとインディアンの人種を超えた絆、ロマンス、そして復讐劇…フェミニズムの文脈でも再評価著しい激動と葛藤の歴史ロマンス大河小説。
現代イタリア文学と聞いて思い浮かべるのは、エーコ、タブッキ、カルヴィーノ、ブッツァーティ、モラヴィア…しかし彼らがおもに活躍していたのは前世紀のこと。では、イタリアの文学は衰退したのかといえば、とんでもない、なぜこれまで紹介されてこなかったのか不思議に思える作家たちが山ほどいるのだ。本書はいまを生きる新しいイタリアの作家によるヴァラエティ豊かな作品を厳選した、本邦初の21世紀イタリア短篇アンソロジーである。普通の人々の生活に降りかかる移民・格差・人種問題、新しいセクシャリティのかたち、めくるめく幻想の世界、そして甘くほろ苦い少年少女時代の記憶ー現在のイタリア文学シーンを代表する13人が繊細に大胆に鮮烈に描く多様性にみちた15の短篇を収録。巻末に各作家・作品を詳述する解説を附す。
『大地』の著者の失われた作品、40年の時を経て…。主人公の天才児、ランドルフ(ラン)・コルファックスの成長物語。ランは人生の真実と意味を追い求めて、ニューヨーク、イギリス、パリに旅する。DMZ(非武装地帯)の警備に就いた韓国では、人生を一変する出来事に遭遇ーついに愛に辿りつく。ランは才気煥発なステファニー・コンに恋をする。彼女は中国人の父親とパリで暮らし、アメリカ人の母は彼女が六歳のときに家を出たまま音信不通であった。ふたりの若者は、真のアイデンティティーを模索する。ランは貪欲な知的好奇心に悩まされ、世の中で経験することを頭のなかに組み込もうと懸命になる。ステファニーは混血の生まれゆえに疎外感を抱き、自身の二つの文化のせめぎあいを解消しようともがく。しばらくぶりに再会を果たした二人を待ち受けていたものは、ランの英知をもってしても想像を絶する結末であった。『終わりなき探求』はパール・バックが生涯大切にしていたテーマの数々が織りなされ、読者を魅了する。最晩年の著者が情熱を傾けた、著者自身に最も近い作品として、パール・バックを長年愛読してきた何百万もの読者の心に響くだろう。
今は亡き大鉱山主の娘エリザベス・ブースは、ハドソン河畔にある古いカーペンター・ゴシック様式の屋敷に、夫ポールと暮らしていた。山師気質で粗暴なポールは、メディアコンサルタントとしての成功を目論見、いくつもの胡散臭い事業の立ち上げを画策し動き回っている。ひっきりなしに屋敷にかかってくるいくつもの電話、そして訪ねてくる怪しい男たち。彼らが交わす錯綜した会話の断片からは、CIA、FBI、放送局、種子販売会社、鉱山開発会社などの影が垣間見え、やがて巨大利権をめぐる遠大な世界的陰謀へと話は広がり、エリザベス自身もそこで起こる事件へと巻き込まれていく…全米図書賞受賞『JR』の作家ギャディスによる、一軒の屋敷を舞台に繰り広げられる、超絶技巧×超高密度文体のゴシック・サスペンス&黙示録的狂騒会話劇。(1985年作)
フランスの文豪バルザックの「恋」をテーマにした三つの短編作品を、『物語フランス革命』の安達正勝による訳と、『摩利と新吾』『杖と翼』の木原敏江による描き下ろしイラストで送る、豪華美麗でエレガントなイラスト絵本!
朝鮮王朝時代の画家師任堂が残した包みには、誰も知らない過去が隠されていた。“良妻賢母”という束縛から画家のイメージを解き放ち、女性たちの内面の葛藤を描いて話題となった力作を初めて日本語訳。
AD19■■、ロンドン、ハイド・パーク。高らかにファンファーレを響かせるパレードを従えて、ドイツ皇帝がやってくるー。ある日突然戦争を仕掛けてきたドイツ帝国に、瞬く間に支配された架空のロンドン。帝国に迎合するか、それとも抗うかー?華やかな英国社交界を舞台に、さまざまな思惑を抱えた人物たちが、したたかな政治劇を繰り広げる。「短編の名手」サキによる、ディストピア歴史IF群像劇!本邦初訳。
独逸が生んだ怪奇・幻想・恐怖・耽美・諧謔・綺想文学の、いまだ知られざる傑作怪作奇作18編を収録。“人形”“分身”“閉ざされた城にて”“悪魔の発明”“天国への階段”“妖人奇人館”不可思議奇妙な6つの匣が構成する、空前にして絶後の大アンソロジー。ほとんど全編が本邦初訳!!
アメリカSF界のレジェンド、カリスマSF作家ハーラン・エリスンはSF以外の小説も凄い!犯罪小説を中心に非SFジャンルの初期傑作を精選、日本オリジナル編集・全篇本邦初訳でおくる暴力とセックスと愛とジャズと狂気と孤独と快楽にあふれたエリスン・ワンダーランド!
その刹那、わたしの眼に映った息子の顔に浮かんでいた恍惚の表情は美しかったが、同時に年老いてもいた…少年と彼に取り憑いた正体不明の存在“あれ”との顛末を妖しく語り、読者の想像を超える衝撃的な結末を迎える代表作中篇「死者の饗宴」のほか、“サトレジ号でたぶん1898年だった”という謎の言葉と不気味な子供に翻弄される男を描く狂気に満ちた怪異談「ブレナーの息子」、ビルマの神秘な力を持つ宝石と護符をめぐる奇妙な物語「煙をあげる脚」など、知られざる英国怪奇文学の名手による異形のホラー・ストーリー、幽霊物語、超自然小説を厳選した全8篇。