出版社 : 幻冬舎
ちょっと不思議、だけど愛おしい。もしも動物たちや花の精霊と話ができたらー。個性あふれる仲間たちとの出会いを描く、ほっこり短編小説集。運転手に化けた狸とのアイロニックな世間話ー「タクシードライバー」。ネズミに鰺の塩焼きを盗まれた哀れな愛猫とのドタバタなリベンジ劇ー「猫とネズミ」。庭に咲くピンクの花に宿る可愛い精霊のささやかな“お仕事”-「捩花の精霊」。ほか15編の物語。
14年前、家の天井裏には赤ん坊の死体があった。刑期を終えた母・清子との再会をきっかけに、劉生と優子は、被害者に対する罪悪感や家族との関係性、自身の心の問題に直面する。彼らを待ち受けるのは家族の再生か、それとも破滅かー。
瀬戸内海にあるセミの鳴き声しか聞こえないような小さな島に響いた爆音、黒い雲の柱が『日常』を終わらせた。戦時下の日常・煽情的日々を淡々と記しながら、家族との距離感や都会から来た異質な転校生の存在に振り回されるカズオの葛藤と成長を描いた一冊。
ある日突然、巨大な虫へと変身してしまったグレゴールと、異常事態にてんやわんやな家族たち…。はたして彼らは平穏な生活を取り戻せるのか?怒涛のテンポで繰り広げられるドタバタ劇!カフカの名作小説をまさかの大阪弁で翻訳!
呉服店の娘である母・絹子は、家族の生活を守るため、持ち前の商才を駆使して巧みに立ち回り、生きる希望をつないでいた。食糧難でも明るくにぎやかに暮らす一家だが、長男の出征や疎開により、次第に離ればなれになっていく…。敗戦が色濃くなった太平洋戦争末期の東京郊外。死と隣り合わせの日々の中で、何が人々を奮い立たせたのか。実体験をもとに、迫りくる脅威と懸命に闘う庶民の姿を描く。
紅葉山高校茶道部部長・高2の檜山柊は二学期始業早々、顧問から校内の茶室「紅葉楼」の移転を告げられる。紅葉山を借景に、池を抱く広い茶庭に四季折々の花が咲き、観月にもふさわしいその茶室は、柊自身にも部員皆にもかけがえのない場所だったー。「紅葉楼」を、そこでしか得られない時間を守るため、少年たちの熱い闘いが始まる!
バイク仲間の勧めで出版社の作品コンテストに応募した中年、五所川原高志52歳。話題が話題を呼び一躍有名作家の1人となった彼は、充実した日々を過ごしていた。そんな折、別れた妻が認知症に。元妻が彼だけに求めた純粋な想いとはー。
友人との別れ、名声との別れ、最愛な人との別れ…。いろんな別れがあるのは、それだけ出会いがあったということ。人生は邯鄲の夢。つつましい日々が綴られた、琴線に触れる短編小説集。
「勉強ができる」ことを、当たり前だと思っていた。東京の名門大学に入学したものの人生初の挫折に打ちひしがれていた僕は、一人旅のために始めたバイトで、金沢から来た大学生ユミと出会う。ユミが書いた一編の小説、旅中に携えていた数冊の本、そして彼女と目にした“あるもの”-。自尊心が傷つき、自分自身とうまく向き合えなかった僕を揺り動かしたものとは。遠く離れた地での青春が、次第に重なり合ってゆく。
龍野・圓光寺の道場で兵法修行をする宮本武蔵は、剣の腕を磨くために参戦した伏見城攻めの最中、手負いの仲間を抱えた3人の忍びと出会う。共に黒田家に仕えることとなった武蔵たちは、京の剣の名門・吉岡家や彼らに襲いかかる柳生一門、伊賀の忍びとの戦いに臨んでいくー。
東京都墨田区、古き良き下町に生まれた主人公は、マコト、ユー、そして僕たちのヒロイン・カホといつも一緒だった。しかし、成長とともにそれぞれの複雑な思いが見え隠れし、中学卒業を機にバラバラの道を歩み始めることに…。僕が広告営業の仕事にも慣れた頃、音信不通だったユーから突然呼び出され、止まっていた物語は再び動き始める。
いつも飄々として、謎めいた雰囲気を醸し出している、奏杜高校の校務員・平人生。「人生先生」と呼ばれる彼のもとには、日々、悩みを抱えた高校生が訪れる。人生先生と話すうちに、自分なりの答えを見出していく生徒たち。彼らは次第に、人生先生が始めた中庭のビオトープ作りに参加するようになり…。
夫と死別し、後に流産した秋夜。悲しみを断つためにも再婚し、善財家に嫁ぐが、そこに安寧はなかった。義母からの苛めに心が壊れかけてしまう。そんな時、近隣に住む小学生の優真と出会い、交流が始まった。優真もまた家庭に問題を抱えており、二人は互いの拠り所になっていく。ただ平穏に暮らしたい。だが、二人の願いは叶わない。秋夜はついに家から逃げ出すが、義祖父の訃報で家に戻らざるをえなくなる。さらに同じ頃、優真の親友の身にも悪意が迫っていた…。連続する悲劇は「不運」で片づけられるのか?秋夜の絶望は次第にある疑念へと変貌していく。歪んだ人間心理が行きつく先はー。
自由が丘、マリクレール通りの裏手にあるBar D’s Graffiti.多くの客が訪れ、人生の横顔を見せていく。ある日、常連客が連れてきた女性・亜美は許されぬ恋に苦しんでいた。「次の人生では、あの人にとって無標な存在になりたい」と謎めいた言葉を呟く彼女に、なぜかマスターである“僕”の心は揺れる。
ありのままの自分でいられる、同級生の知之。大人の優しさで包み込む、尊敬する医師の聡一郎。過去の経験から恋愛に慎重になっていた27歳の史は、2人の男性から想いを寄せられるも、自分の気持ちを確信できずにいた。そんなある日、知之から衝撃の事実を告げられてー自分の本当の気持ちがわからず2人の男性の狭間で心が揺れ動く史。そして彼女を待ち受けていた、あまりにも悲しい運命とは。愛おしく切ない、感動のラブストーリー。
中学一年生の冬、想いを寄せる幼馴染の沙耶伽を守るため、大きな罪を犯してしまった律。それから6年。人知れず罪の呵責を抱えたまま大学生になった彼の前に、二度と会えないはずだった沙耶伽が現れる。奇跡の再会をきっかけに、封印していた恋心を呼び覚ます2人。だが、やがて悲劇的な運命に翻弄されていくー。名古屋市・八事町を舞台に紡がれる、切なくも美しい純愛物語。
「どっちみち死ぬんだから食ってあげましょうね、あなたの夢を」妻との死別をきっかけに仕事を辞めた男は、思い出が残る中国を訪れる。道中で出会った奇妙な仲間とともに、文明を辿る旅が始まったー夢と現実が交差する世界を描いた、予測不能なファンタジー小説。
昭和二十二年、夏。丸山家に生まれた元気な女の子・珠輝は、両の眼球のない子どもだった。“人と違うこと”で周囲の人間や親族からも理不尽な扱いを受ける子ども時代は、彼女にとって苦難の日々だった。しかし、輝きを決して失わない心を持つ珠輝は、いつしかかけがえのない存在に囲まれていきー。強く、しなやかに生き抜く姿に心揺さぶられる、実話をもとにした物語。