出版社 : 慶應義塾大学出版会
20世紀文学の傑作(中の傑作)、ボルヘス『伝奇集』。この巧智あふれる書物に向き合い、その多彩な謎を鮮やかにとりだして再ー物語化しながら、虎、無限、円環、迷宮、永遠、夢といったテーマをめぐる探究を読者に誘いかける。ボルヘス流の仮構やたくらみを創造的に模倣しつつ語られた、まったく新しい画期的なボルヘス論。
1989年の革命、9.11の犠牲、イラク戦争、深まる中東の危機、そして、アメリカ共和国の没落ー。時代の変化に抗い、飽くことなく真実を追究した知識人、トニー・ジャットの魂の軌跡。
映画やマンガにリメイクされつづける『西遊記』は子ども向けの本ではない?長大な物語のあらすじを追いながら、中国の誇る“神怪小説”のなりたちと伝播を、妖怪たちの目線から語りつくす。西天取経の旅とともに、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎがはじまる!
『スタンブール特急』『ブライトン・ロック』『第三の男』『情事の終わり』-映画批評家としても活躍した小説家グレアム・グリーン(1904-1991)の映画的側面に光をあて、ヒッチコック、チャップリン、ルネ・クレール、フリッツ・ラングなど、同時代の映画作家とのかかわりからグリーンを“遅れてきたモダニスト”として捉えなおす。
20世紀に新生した“宗教学”を代表する2人が1972年から86年にわたり交わした111通の往復書簡ー。ルーマニア人亡命者、宗教学者、小説家、師弟、そして友として、親しみ溢れる筆致で交わした魂の対話。
「わたしは光に照らされる感覚は好きではない。それはひっそりと隠れている安全な感覚をわたしから奪い取り、肉体のあらゆる器官がさらけ出されるような思いを強いる。わたしは慌てて、すぐ皮膚の毛穴の一つ一つに歩哨をたてる。光にわたしをのぞき見られないように。しかし世間には太陽が多すぎる。…わたしはよくわかっているのだ。どんな種類の光であっても、それに覆われてしまう生活は、虚飾と嘘に満ちたものだということを」。女性の官能の美と自分の存在とは何か?を「肉体の言語」で描き、世紀末の中国に新しいアイデンティティの可能性を示唆した長編小説。
キーポイントは、口。メディア・セクシュアリティ・帝国・大飢饉などの歴史。そして、基礎作業として、まず真理と物語の問題。多彩な要素が絡みあいながら、テキストをさまざまに彩ってゆく。