出版社 : 春秋社
チベット発、シスターフッドの物語。ラサのナイトクラブ“ばら”で働く4人の女性たち。花の名前を源氏名として、小さなアパートで共同生活を送る彼女たちは、それぞれが事情を抱えてこの町にやってきた。暴力や搾取、不平等の犠牲となりながらも支え合って生きる彼女たちの心の交流と、やがて訪れる悲痛な運命を、慈悲に満ちた筆致で描き出す。
希望の光、再生への旅。満州からの帰還。敗戦の傷跡を背負いつつ真摯に生き抜いた人びと。若い世代は過去から何を伝え聞いたのか。世代を超えて語り継ぐ小さな愛と勇気と祈りの物語。
第二、第三の人生を自分らしく生きることに悩みを抱える女性は多い。夫婦、子供、友人との関係など、明るく軽やかな日々を送る心意気と気遣いとは何か。新たな希望のときを踏み出す一歩。
苦しみのない人なんて、いない。それでも、私たちは生きている。介護、原発、死刑、犯罪、いじめ…複雑化する現代社会のなかで、いのちきらめく一瞬を見つけて、生きていく。“人生”が凝縮された掌編集。
飛騨高山は江戸幕府の直轄地であった。一八六八年(慶応四年)、明治新政府の代表者として、最初にこの地に派遣されたのが、国学者竹沢寛三郎であった。彼は人心掌握のため年貢半減、諸運上軽減廃止等を布告したが、竹沢の施策は新政府の方針に反して理想的すぎたため、罷免される。替わって、元水戸浪士梅村速水が新たに県知事として任命される。梅村は企画力に優れた若き俊才で、急進的な改革を推し進め、飛騨高山の土俗的な風習や伝統的な制度と対立していく。さらに新政府の矛盾した政策の忠実な実行者としての役割をも演じていく。そして村娘おつるを迎えたことで、すべてが裏目に出ることになる。
梅村速水の政策は根本的には、飛騨高山の文化、歴史を無視したもので、彼の強引なやり方に、農民たちは極度な恐怖を抱くようになった。しだいに梅村は孤立していく。様々な小さな齟齬の積み重なりが、ついに農民一揆を招来する。村に怪火が次々と起こるようになる。それが、不穏な人気をいやが上にかき立てた。農民たちによる打ちこわしが始まった。高山の町は一揆が占領したのである。梅村は追われる身に変わっていった。明治政府は梅村知事を罷免した。梅村速水は公金横領という罪状により唐丸かごで京都へ送られ、移送された東京で未決囚のまま死因に謎をのこして獄死する。やがて一揆の首謀者の逮捕が始まり、みな牢死する。「そしてこれが犠牲者の大多数の共通した運命であった。」