1998年9月15日発売
快男子風洪は学問に志し、武を捨てて商人・白圭と名告る。戦乱の国々を行き交う学者や商人たち。秦の孝公は覇道を進み、公孫鞅に厳格な法の体系をつくらせる。白圭は美しい翡媛を妻に迎え勇躍、魏に囚われた、天才軍略家孫〓@52E0@を救い出す。法に生きる冷厳な男と、侠に生きる熱い血の男の、鮮やかな対比。
改易配流された福島正則は捨身の闘いに立ちあがった。相手は徳川幕府の重臣・本多正純。執拗な攻撃に、正則は陣屋の周辺な流水要塞をめぐらし、水の砦を築いて防戦する。大久保党と闇の宰領から二重三重に仕掛けられた恐しい罠。幕府に挑んだ最後の武将の悲哀と不条理を描ききる第五回時代小説大賞受賞作。
ホワイトハウスの腐敗を厳しく弾劾する無党派議員チャーリーは、国民の熱狂的な支持をえて大統領の座に向かって着実な前進を続ける。脅迫、買収、盗聴、謀略…あらゆる手を使って追い落しの罠をしかける保守派議員たち。卑劣な政敵との緊迫した闘いとワシントン政治の内幕を暴くポリティカル・サスペンス。
江戸・深川澪通りの木戸番小屋に住まう夫婦、笑兵衛とお捨。そこには、人々の悲しみ、愁いを癒してくれる灯がある。訪れる人の心の奥を、そっと照らしてくれる。労り、助け合う市井の人情。人の世の機微を穿った逸品揃い。思わず挫けそうな、いつの間にか冷めかけた心を優しく温めてくれる珠玉の時代小説集。
豊臣秀吉の朝鮮出兵で捕われた両班の娘・風蓮は村上景親に連れられ日本へ。彼女に仕えてきた伽〓は一人逃亡を決意するが、国へは戻れず偶然出会った同郷の男と暮らし始める。長い年月を経て再び出国をはかった伽〓だが…。望郷の念を胸に秘めながら力強く生きる女たちの哀しき宿命を描いた傑作長編小説。
この世には不思議なことなど何もないのだよー古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。
浅草黒船町の小間物屋「紅屋」の女あるじお乱は、美人でお侠で艶っぽく、皆が振り返るほどの女っぷり。そんな美女が大の捕物好きときた。今日も馴染みの破れ寺に通っては、そこに住みつく、いわくありげな生臭坊主や虚無僧と、事件の推理に花を咲かす。寺に来てはなにかと憎まれ口をきく岡っ引の鎌吉親分も、彼女たちのおかげで大手柄の連続。お乱たちのからだをはった探索で、次々と事件のからくりが明らかに。
年頃を迎えた娘へのさりげない父親の愛情が、胸に迫る表題作「頬をつたう涙」。酒とオーケストラをこよなく愛し、五十五歳で逝ってしまった兄を愛しむ弟の思いを描いた「酒呑みたちのオーケストラ」。勤務の合間に、偶然に街で出逢った共働き夫婦の愛情の機微を綴った「平凡な生活」など全十一篇。家族や友人、身近な人々を限りなく暖かい目で見つめ描いた、人生の哀歓あふれる珠玉の小説集。
高級車窃盗常習犯のアリスは、二十歳になる女性。服役を終えて出所する日、彼女は急死してしまった母が遺したというカセット・テープを渡される。「二十年前、一生に一度あるかないかの恋をした。それも二人同時に…」アリスはレオとジュリアンという二人の紳士に会うが、どっちが本当の父親なのかがわかる前に、とんでもない事件に巻き込まれてしまう。マフィアを敵にまわした三人の運命は…。
シカゴの静かな郊外で自閉症の少年サイモンは国家の安全を脅かす最も危険な存在になろうとしていた。恐ろしいほどの数学的才能を持つ彼は、みずから知らずに国家安全保障局(NSA)の開発した超ど級難度の暗号「キウィ」を解読してしまったのだ。NSAに命を狙われるサイモンを守るのはFBI捜査官のアート・ジェファースンのみ。際限なき逃亡を続ける中でサイモンはしだいに愛と勇気に目覚めていく。
「うまくいけば、我々は太平洋に覇を唱えられる」「太平洋の覇者か…できることなら太平洋の王者といきたかったな」日米講和の道程を模索する野分礼二首相に、比島にて辛勝を収めた海軍軍令部総長山本五十六大将より、次なる作戦が提示されていた。アメリカ太平洋艦隊の根拠地を奇襲する-ハワイ作戦。ここで勝利を掌中にできれば、さしものアメリカとて和睦への機運が高まるはず。是が非にでも決行したいと熱く語る山本であったが、作戦そのものの難しさもさることながら、その実施を阻む存在、“内なる敵”陸軍という難題が立ちはだかっていた。作戦の概要が説明される大本営会議で野分が仕掛ける秘策とは?戦記シミュレーション小説の新しい波、堂々の完結篇。
強気の経済政策が破綻したルーズベルト大統領は、早期に対日戦争を勃発させることを決意した。マニラの太平洋軍総司令官マッカーサー陸軍大将にメッセージが届く。その内容に「ルーズベルトの捨て駒にはならん」とマッカーサーは呟く…。上海在留の米国人が連続して殺害された。犯人は日本人だとの噂が広がる。これは、対日感情を悪化させるための米情報組織による秘密工作だった。さらに大統領は、日本海軍を挑発するため、軽巡と二隻の駆逐艦の上海周辺への派遣を決める。一方、ドイツ空軍中国派遣部隊にとって目障りなのは、中国沿岸部に出没する日本帝国海軍の空母部隊だった。そこに、日本海軍の輸送部隊が接近との極秘情報が入る。迎え撃つべく攻撃隊が飛び立った…。大好評の本格シミュレーション戦記第2巻。
江戸元禄期。大坂の染物屋の若旦那文七は放蕩を尽くして勘当の身。金もなく途方にくれる文七は、やはり金に窮する赤穂浪人不破数右衛門と出合う。それは、殿中で赤穂藩主浅野内匠頭が吉良上野介を斬ったことが浪速の町に知れわたった日であった。町人と武士の身分を超えて気の合う二人は、やがて赤穂の仇討ち騒動に巻き込まれていくのだが…。書下ろし痛快時代小説。