2000年10月1日発売
僕たちは殺人者になることを恐怖した。ゲーム感覚でオヤジを狩る高校生たち。土下座する謎の覆面男。格闘技道場に通う美少女。昔日の女相撲力士「あばらおり」。なぜ僕たちは暴力をふるわずにいられないのか…。暴力とそれを生み出す人間の闇を描き出す。第11回朝日新人文学賞受賞作。
バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆けるー親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。
ヒコクミンは処刑せよー暗躍する秘密結社・千年王国の辣腕エージェント、ジャック・アマノは、ある処刑の執行を機に組織に疑問を抱き始める。殺された二人は無実だったのか?千年王国に反旗を翻す伝田家麿の正体は?国家の危うさと時代の深淵を鋭く描く長編ミステリー。
もう若くはないけれど、落ち着いた生活がある。このまま穏やかに年をとっていくことに何の不満もないはず。けれども、ふと感じる空虚感を埋めるように、どこからか微熱のように生じてくる、この甘やかな欲望はなにー。過去に想いをめぐらせれば、はかないときめきをともなって、官能的なまぼろしが幻灯のように立ちあがる。女の心とからだをファンタスティックに描いた短編集。
覚えたてのセックスにはまってた、あたし。ある日の下校途中、薔薇の花束を抱えて派手な女が待っていた。おやじの愛人=由美。そのときから、由美との奇妙な関係が始まった。あたしは学校をふけて、彼女の部屋を訪れるようになったー「熱帯植物園」。“研究”のために同級生と寝たり、自殺に悩んだり、アルコールに浸ったりする、少女たち。クールな10代の性を描く、R指定の処女作品集。
若い女性と燃えあがるような情交を愉しむ。妻の体の奥底まで追求する。男は会社を退き、都市と故郷を往復する気ままな暮しをおくっていた。或る日、河内亜紀と出会う。どこか謎めく女。その躯に惹かれ、逢瀬を重ねた。自宅には、ビジネスの世界で活躍する妻・治子が待つ。彼女も、夫に応じ、開かれてゆく。田園と都会、愛人と妻の間を揺れ動く日々。そして、一片の疑惑。渾身の長編小説。
花屋で働く年下のボーイフレンド、あるおは、逢うたびに同じことを話す。彼はものを憶えられない「病気」だった。あたしは、あるおに抱かれながら、たとえ彼が意識の上で完全にあたしを忘れてしまう日が来ても、それでいいと思うー。性愛を通して人の存在のもろさと確かさを描いた「あたしのこと憶えてる?」、ゼリーにからだをもてあそばれる「ときどき軽い」など、大胆で繊細な九篇。