2000年6月15日発売
「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される六つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のふるえを温かな視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。
自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。
ドライブの途中、四人が迷い込んだ山荘には、一台のベッドと冷蔵庫しかなかった。冷蔵庫には、ヱビスのロング缶と凍ったジョッキ。ベットと96本のビール、13個のジョッキという不可解な遺留品の謎を酩酊しながら推理するうち、大事件の可能性に思い至るが…。ビール党に捧げる安楽椅子パズル・ミステリ。
第二次大戦も終盤を迎えようという1944年。守勢に立たされたドイツ軍の最大の関心事は、大々的な反攻を企む連合軍のフランスへの上陸地点の特定だった。折りしも、国防軍情報部は有力な情報を入手した。ロンドンで、反攻に関する極秘計画“マルベリー作戦”が動きだしたという。早速、潜入工作員キャサリンに、機密奪取の指令が下った!一方、ドイツの動きを察知した英国情報部も、全力をあげ工作員割り出しにかかる。
キャサリンはマルベリー作戦の関係者に接近、入手した極秘情報を本国に送る。だが、イギリス側の欺瞞工作により国防軍情報部が攪乱されていることを知った彼女は情報を直接伝えるため、Uボートでドイツへの渡航をはかる。必死の捜査の末、キャサリンの存在を割り出した英国情報部は、連合軍の上陸地点の露見を阻止すべく必死の追跡を開始するが…ノルマンディ上陸作戦前夜の英独の壮烈な諜報戦を描く、大型冒険小説。
クィラランの屋敷の近くに、アート・センターが完成した。開館直後、クィラランがココを連れてセンターを訪れると、複数の絵画が盗まれていることが判明した。さらに、センターの前に住む風変わりな老婦人コギンの農場が火事になり、中から彼女の焼死体が。死ぬ直前、彼女が土地を売って大金を手にしていたと知ったクィラランは、絵画の盗難事件と不審な火事の関連を探る…鳥と遊ぶシャム猫ココが導いた意外な真相は。
江戸市中に奇矯な行動をとる女たちが増えた。しかも、次々とその股間から子蜘蛛を産み落とすのだ。旗本子弟からなる尚義組と、美剣士、乾蓬莱之亮は、女を襲う蜘蛛の仕業と看破。童女のような謎の少女おねむと共に、理性を失った民と戦うが、その背後には恐ろしき物の怪の策謀があった。艶然たる風水師と化し戦うおねむも、ついにその罠に落ち、自失状態に陥る…。傑作伝奇時代小説の決定版。書下し。
大阪豊能の山中で猪犬訓練所をやっている氷室のもとに1人の女が訪ねてきた。名前はミキ。そこへ阿倍野の城北組の組員が犬の出張訓練の依頼にきた。氷室が断ると、彼らはいやがらせを始めた。ハンター達が氷室の山小屋へ行くのをやめさせているのだ。それを知った氷室は単身彼らの所へ向かった。過去を捨てた中年の元やくざが冬の山中で繰りひろげる凄絶な殺人バトル。剛腕作家の新境地。