2001年2月28日発売
英国がまだ戦争の痛手から立ち直れず、不景気と不安が社会を覆っていた1960年代。ロンドンの裏社会でのしあがった一人のギャングがいた。「拷問好き」と綽名され、詐欺、麻薬密売、ポルノ販売、買収、脅迫、さらには殺人にいたるまで、悪いことならなんでもこなし、いまやかのクレイ兄弟と覇を競うまでになった男、ハリー・スタークス。だが、手下たちにも見えにくい意外な顔を、ハリーはまた持ちあわせていた。オペラを聞き、チャーチルを尊敬し、有名人には弱く、愛した青年たちや母親には優しい。その真の姿を知る者はどこにもいない。度胸と奸知と暴力を武器に、次々と敵を消し、金を掻き集め、やがて時代が彼を必要としなくなるまで、ハリーは暗黒街を駆け抜けていく…激動の時代を背景に、一人のギャングが、いままさに伝説となってゆく。
菊山事件-妹をレイプした男を刺殺したとして起訴された矢代昌宣は、警察での自供を翻し、終始無実を訴え続けながら、控訴審中に獄死した。それから十八年。弁護団は、現在も冤罪事件として再審請求に向け活動を続けている。そんななか、事件の裁判長だった滝川実が、ひき逃げされて死亡した。容疑者として逮捕されたのは、現場近くに住む元警部で、かつて矢代を自供に追い込んだ堀内利勝だった。堀内は苛酷な取り調べの末、自供するが…。菊山事件の復讐のために誰かが仕掛けた罠なのか?傑作長篇ミステリー。
リングフィールド卿は障害物競走で命を失った。そのレース前、遺言状を残していた。娘の後見人として、レース主催者であるステヴィントン侯爵を指命したのだ。父の死を招いた人物が後見人とは…バレッタは現実を受け入れられず遺言の確認に、侯爵の屋敷へ赴く。「わたしはきみの後見人なのだ。」その言葉に茫然とするバレッタの前に煙突掃除の少年が転がり落ちてきた。続いて、親分による虐待場面が展開する。バレッタは耐えきれず、侯爵に少年の身を買いあげてくれるよう嘆願する。侯爵の庇護のもと奇妙な同居が始まった。