2013年11月1日発売
拵屋の異名を持つ銀次郎は、大店のお内儀や粋筋の姐さんらの化粧や着付けなど「拵事」では江戸一番の男。だが仔細あって、雄藩大名、いや時の将軍さえも手出しできない存在だった。その裏事情を知る者は少ない。そんな銀次郎のもとに、幼い女の子がひとりで訪ねてきた。母上の仇討ちを助けてほしいという。母娘の頼みを引き受けた銀次郎は、そうとは知らず修羅の道を突き進んでいく。
一九三七(昭和一二)年。鏡龍之介は、帝国海軍の搭乗員として新設の第一三航空隊へ配属された。ついに最前線で戦うのだ。攻略目標の南京は、シェンノート大佐ら凄腕の外人航空部隊の存在に加えドイツの軍事援助によって要塞化されている。攻撃前夜、龍之介に託された極秘命令とは?大人気シリーズ「スクランブル」の女性パイロット鏡黒羽の祖父の若き日を描く航空冒険活劇、第二弾!
標高3,193mを誇る北岳の警備派出所に着任した、南アルプス山岳救助隊の星野夏実は、救助犬メイと過酷な任務に明け暮れていた。苦楽を分かち合う仲間にすら吐露できない、深い心の疵に悩みながらー。やがて、登山ルートの周りで不可解な出来事が続けざまに起こりはじめた…。招かれざるひとりの登山者に迫る危機に気づいた夏実は、荒れ狂う嵐の中、メイとともに救助に向かった!
ケンタッキーダービーを目前に控え、本命馬の誘拐未遂事件が発生。日本人調教師の勇敢な行動で事なきを得、レースは予定どおり開催された。本命馬が順当に優勝、そして日本勢も四着と大健闘。だが、その立役者の騎手・竜見秀行が翌日、変死体で発見される。ふたつの事件をめぐる奇妙な接点。やがて優勝馬にある疑惑が。息を呑む極上ミステリー。
藩主の娘・茜や江戸家老・塩谷隼人の覚えめでたいとされ、朋輩の嫉妬に憔悴する鏡大次郎。隼人はことの発端となった道場主・日比野左内を藩邸に呼ぶ。左内は大次郎と激しく木刀をかわした後、あらぬ噂で彼を追い込んだ首謀者二人に言い放つ。「立ち合えば自ずとお人柄も分かります。鏡殿の剣には一片の偽りもごさいませんでした故、ご両名のお心の内を拝見いたしとう存じまする」。新作二篇収録。
「純喫茶トルンカ」は美味しい珈琲が自慢のレトロな喫茶店。東京の下町にひっそり佇む店には、魔法をかけられたようなゆっくりとした時間が流れ、高校生の看板娘・立花雫の元気な声が響く。ある日バイトの修一と雫が店に出ていると、女性客が来店。突然「あなたと前世で恋人同士だったんです」と修一に語りだし…。孤独や悲しみを抱えた人々の心がやわらかくドリップされていく…。ほろ苦くも心あたたまる物語。