著者 : 七和禮
ヘカトンケイルを滅亡寸前まで追い込んだ残桜症禍から、五年の歳月が過ぎた。踏鞴家給地でのんびり過ごしていた康太は、ピスフィの熱烈な誘いを受けて熱帯の島しょ部、香料諸島(ヴィトネシア)へと赴く。落ちているものをすぐ食べる悪癖を買われた康太が、『ピーダーとネイデル、クエリアの会社』のプラントハンティング部門に出向したかたちだ。到着したアレナリア島で、ふたりは、無人化した村落にただひとり佇む女性と出会う。椒美(はじかみ)と名乗った女性は、アレナリアのひとびとが残桜症によって全滅したことを告げたのだがーーー。
護民官を僭称し、ヘカトンケイルを恐怖で覆ったナバリオーネは獄死した。しかし、ヘカトンケイルは未だ危地のただなかにあった。残桜症ー高い感染力と致死率を持つ疫病が尚もはびこる中で、季節は巡り、冬となった。降りしきる雪と下がり続ける気温が、史上類を見ない厳冬を物語っていた。ピスフィやナバリオーネが予見していた通り、凍れる冬がヘカトンケイルを襲ったのだ。全球規模の寒冷化と未曽有の疫病に苦しめられ、滅亡めがけて転がり落ちていくヘカトンケイルで、康太は自分にできることを探し続ける。釣り糸を垂らして根魚を釣り、おにぐるみの樹液を煮詰め、干潟で青のりを拾い、移民島の畑で大根を引っこ抜き…康太が出した結論とは!?
康太たちが、新興貴族の大衆主義者、ナバリオーネ・ラパイヨネの陰謀をくじき、移民島を救ってから、しばしの時間が流れていた。季節は巡り、夏だというのにヘカトンケイルでは、やけに肌寒い日々が続いていた。移民島の二人の少女・白茅とキュネーは、変わりゆく状況に翻弄されていた。一方、康太と榛美は、平穏な日々を味わうように過ごしていた。海藻を摘んで寒天をつくったり、潟に小舟を出して釣りをしたり…。そんなある日、二人のもとに、ピスフィがとある仕事の話を持って来る。ヘカトンケイルの国家元首にしてピスフィの父、ピスディオ・ピーダーの帰国祝いに、ふさわしい料理をつくってほしいという依頼だった。だが、ヘカトンケイルにはとんでもない凶兆が忍び寄っていたのだった…。
踏鞴家給地を離れ、ピスフィたちと共に広い世界へ旅立った康太と榛美は、世界の資産の八割を独占するという世界一強大な国家・ヘカトンケイルに到着する。ヘカトンケイルにはショッピングモールと呼ばれる巨大な施設があり、まるで現代日本のように物であふれ、とても豊かな環境だった。あまりの違いにうろたえる榛美と豪華な食事を楽しんでいると、ミリシアから弟の話を聞かされる。いつまでもふらふらしている弟には生涯をかけた仕事を見つけてほしいと願い、康太にその手伝いをしてほしいのだという。頼まれた康太は、気づけばなぜか、ミリシアの弟・パトリトとともに、船に乗って釣りをしていたー。
小さな、けれど平穏な踏鞴家給地の日々は永遠には続かない。ミリシアとビスフィは、本来の目的であった商談をしに領主館に向かう。一度は殺されかけた康太もまた、この踏鞴家給地を料理の力で救うため同行した。そこで話を聞いた康太は、全てを失った月句のために、踏鞴家給地の食材を使い、思い出の饗宴でもてなすことを決める。ぶどう酒色の春。夏にたなびく淡雪。紅に染まる秋。冬は白く、あたたかく。四季の記憶を料理に呼び起こされ、月句は過去と向き合っていく。そして、康太も新たな旅立ちを決めていた。若き居酒屋店主にエルフの娘、夢を見る商人、知識欲に取り憑かれた少年…それぞれが選ぶ道とはー。大人気食ラノベ第4弾!居酒屋店主が作り出す四季の思い出のメニューとは?
女子高生・瑠璃崎蒼音は、人間に取り憑いた“悪魔”を祓う正真正銘のエクソシストー!しかしその退治の仕方は、恫喝(?)、蹴る(?)、殴る(?)と何ともドS。「悪魔ごときが蒼音様に楯突いてんじゃないわよ、歯抜くわよ」暴言収まらない彼女とその下僕もといアシスタントの一色弘青は日々悪魔が引き起こす謎の究明に奔走していた。そんな彼らに奇妙な投石事件の依頼が舞い込んできて!?第21回スニーカー大賞“特別賞”受賞作!