著者 : 大石英司
ハワイ州の日系人部隊が派遣先のイラクで待ち伏せ攻撃に遭遇、生存者が捕虜になった。犯人グループからの身代金要求に対し、米政府は「テロ支援になる」と支払いを拒否、交渉は暗礁に乗り上げる。そんな中、ハワイ島で米副大統領令嬢が拉致され、ほぼ同時にオアフ島では観光客で賑わう「戦艦ミズーリ」が占拠された!その頃、ハワイには陸自の特殊部隊が研修に来ていた。誘拐犯が逃げ込んだジャングルでは隊長自ら率いる本隊がトレッキング訓練を、ミズーリでは女性一名を含む一三名の分隊が艦内見学をしている最中で…。観光気分から一転、戦場の真っただ中へ放り込まれた彼らの運命やいかに。
南海で発見された謎の海洋生物は「スピード・フィッシュ」と名付けられた。恐るべきスピードで船舶を襲い、一瞬にして鉄骨を溶かし、刺激性ガスで空気を汚染する。島嶼部ではガス中毒で多くの死者が発生。しかも、その個体は発見されるたびに巨大化し、とうとう空中を跳躍して内陸部をも襲う勢いに。小笠原・伊豆諸島を北上し東京湾を目指すかのような出没状況が報告されると、都心は大パニックに。避難を急ぐ人々で交通網は麻痺、強盗や暴動までが頻発。ついに政府は、陸海空の三自衛隊に治安出動命令を出した。謎の生物と人類の戦いの行方は-。
直接選挙を実現し民主主義を育みつつある台湾にアジアの巨象中国がついに牙を剥いた。改革開放経済が破綻、軍事的冒険に打って出た南沙諸島で資源を失い、行き場のない中国の矛先は台湾海峡へ向けられた。常任理事国日本は、市場として無限の可能性を秘めた大陸と、産声を上げた民主国家の間で選択を迫られる。日本は金門馬祖両島に陸自からの兵員を派遣する。開戦の火蓋が切られたのは大陸との距離わずかに二キロ、地上で最も堅牢な要塞島、金門だった-近未来軍事シミュレーション。
南沙諸島に艦隊を展開した中国は、さらにフィリピン領パラワン島に空挺部隊を降下させた。対抗してASEAN諸国も海軍艦艇を派遣。睨み合う両艦隊の間に海上自衛隊が国連軍として割って入る。水上艦艇がひしめく南沙の海面下では、潜水艦が静かに互いを探り合っていた。深海を制したものが海域を支配する。海自、中国海軍潜水艦の間隙をぬって国籍不明艦が現れ、中国艦隊への攻撃を開始した。莫大な埋蔵資源とアジアの覇権を手にするのは誰か。常任理事国日本の選択シミュレーション。
急激な経済成長により、中国のエネルギー事情は逼迫。衰退していく北部都市を抱えた中国は、南沙諸島の領有に死命を賭け、海軍艦艇を展開した。南沙の共同統治を主張するASEAN諸国との高まる緊張を緩和させるため、日本政府は国連軍活動に踏み切った。先んじて派遣された潜水艦“あさしお”は中国軍の対潜作戦の標的に。地下資源と交易拠点をめぐりアジア各国の思惑と戦略は交錯する。
聖地解放を大義名分に、イラク軍がサウジ・アラビアへ侵攻。日韓および欧州諸国からなる国連軍派遣が決定される。消極的な米国をしりめに、民航機、トラック、果てはロシアの巨大輸送機まで動員、奇跡的短時日のうちに大量の兵力を展開した陸海空自衛隊。初の実戦にもかかわらず、中東の戦場では、ストライク・イーグル、90式戦車など最新のハイテク兵器が活躍する。だが国内では、潜入したテロリストにより数千もの犠牲者が。
芝浦のディスコ、渋谷駅前など、相次ぐテロで戦場を上回る死傷者が続出し色を失う政府。湾岸でも、旧ソ連軍の3個師団がロシア政府の統制を離れ、その軍備ごとイラク軍に参加、国連軍は苦戦を強いられる。さらにイラクは、ソ連解体のおり密かに持ち出された戦術核弾頭を手中にしているという。核の恐怖に直面し激戦に消耗する現地部隊、テロの恐怖におびえ日常の基盤が揺らぐ国内。日本人と日本社会が体験する国際貢献の現実とは。
戦後初めて日本を親善訪問するソ連極東艦隊。だが、艦隊に随伴の補給艦を、自軍バックファイア爆撃機が対艦ミサイルで撃沈。出迎えの海自八八艦隊に囲まれたソ連側の旗艦・スラヴァ級巡洋艦の至近距離でも、巡航ミサイル訓練弾が炸裂した。さらに、海自護衛艦は、合流した両国艦隊に高速で接近する魚雷の航走音を探知。最新鋭のアクラ級原潜まで繰り出し、友軍艦隊を攻撃するソ連。ペレストロイカ後の軍内部にいったい何が…。
華やかなパーティに日米の軍人が集う感謝祭の夜、三沢・厚木・横田の三基地を完全武装の陸自部隊が急襲し、これを無血占領した。破局を迎えた米国との経済対立、核燃料処理施設への米軍機墜落などに業を煮やした日本政府が、基地返還を求めて危険な一歩を踏みだしたのだ。奪還を宣言、軍事行動を開始する米国。だが、先制攻撃でステルス爆撃機B-2の放った対地ミサイルは、国産VTOL艦上戦闘機「海燕」によって撃破されてしまう。
政治的事情で日本の防衛ラインを強行突破した第7艦隊に対艦ミサイルが殺到。無弾頭の攻撃であったが、米軍はイージス艦、空母「インディペンデンス」ほか多数を失う。両軍の被害を最小にし、政治解決を望む自衛隊の戦術で、奇妙な様相を呈する戦争。しかし、徒らに時を費やす頑なな両国首脳と、すでに多大の犠牲を出した米軍の空挺部隊及び海兵隊の投入により、ついに本格的な地上戦が…。日米双方の誤算はいかなる結末を生むのか。
フィリピン沖を日本へと向かう再処理済核燃料輸送船。その護衛にあたる海上保安庁長巡視船が、突然攻撃を受けた。巡視船は対艦ミサイルの直撃で爆発炎上。同時に襲撃された輸送船では、テロリストがブリッジを占拠する。中東産油国の依羅で、原油価格の上昇とプルトニウム入手を狙った、伝説的傭兵バックィン大佐の作戦だ。アラブ側の核武装を恐れて介入するイスラエル特殊部隊、そして奪還をめざす陸海空自衛隊の精鋭も現場海域へ…。
原潜銀座、対馬海峡に米軍が密かに設置した最新の水中聴音装置DESBEL。これを入手しようと企てるソ連の特殊潜水艇〈ミゼット〉。だが潜水艇の接近は、聴音装置防御用の魚雷発射式機雷を目覚めさせてしまった。被弾しながらも目的の装置を奪取したソ連潜と、国際海峡を封鎖してしまった米軍の機雷により、日米ソ間に極度の緊張が。自衛隊唯一の実戦経験部隊であり、米ソをもしのぐ装備を持つ海自掃海部隊とP-3Cの協同作戦は。
横浜へクルーズ中の動く海上都市“クイーン・エリザベス2世号”が、アメリカ海軍の元軍人たちに乗取られた。さらに彼らは、ソ連の最新鋭戦略原潜“レニングラード”と洋上で会合し、核魚雷の弾頭をQE2へと移す。与党ナンバー2の政治家、米国大統領令嬢夫妻らを乗せた豪華客船と、240発の核を搭載した大型原潜。東京湾へと近づく両艦に対し、米軍グリーンベレーと海上自衛隊対潜哨戒機P-3C部隊による攻撃が命令された…。
QE2乗取り呼応して、ソ連のバルト三国で民族主義者が組織的に峰起した。東京とQE2を人質に、核ミサイルの目標をソ連へと変更する横浜沖の原潜“レニングラード”。ソ連は米軍機に擬装したスホーイ-25を東京上空に浸入させるが、乗取り犯から情報を得た航空自衛隊のF-15に迎撃される。たび重なる情報漏れに疑心暗鬼となる米ソ首脳、そして両国情報機関。日本は海上自衛隊潜水艦“ゆきしお”の大胆な作戦にかけるが…。
洋上に巨大な雄姿を浮かべる空母カール・ヴィンソン。海中でその監視につくソ連のヴィクター3級原潜。双方が互いに敵の裏をかこうと行動したとき、恐るべき事故が起きた。急浮上をかけた原潜が空母の艦底に激突したのだ。沈没圧潰する原潜、メルトダウン寸前の原子力空母。放射能洩れをおして横須賀に強行入港しようとする米空母に対し、海自の最新鋭潜水艦に撃沈の密命が下った。さらに米ソの原潜も各々の目的を秘めて現場海域へ…。名作『レッド・オクトーバーを追え』をもしのぐ傑作長篇。