著者 : 大谷羊太郎
警視庁捜査1課の村岡刑事は、久々の休暇で神戸の旧友を訪ねた。初恋の人・野本由加との再会に甘い期待を抱く村岡だが、北野異人館近くで起きた殺人事件の容疑者を目撃、更に翌日、旧友の妹の恋人だった男の殺害現場の第一発見者となり、警察の厳しい追及を受ける破目に陥った。偶然か、罠か。村岡の容疑を晴らすべく異人館、三宮、ポートアイランドとその足跡を辿る八木沢警部補の胸に由加への疑惑が深まってゆく…。長編旅情推理。
朝鮮戦争末期、佐世保港の灯を見降ろす丘で米軍水兵が変死した。39年後、事件の真相を追って甥の青年が来日。彼は、当時外人バーのバーテンだった柏村と唐崎を横浜に訪ね、叔父の親友が遺した証言をもとに、二人を鋭く追求する。そこで明かされた事実から、柏村の胸にも、事件当夜不審な動きをしていた唐崎への疑惑が…。だが嫌疑を残したまま唐崎が殺された。ハーバーライトの揺れる港街に、時を経て浮び上がる殺人の謎。長篇推理。
大阪「海遊館」で葉子の父、名取興業社長の事故死についての疑惑をほのめかした元社員・今泉が、東京ベイエリア「葛西臨海公園」で殺された。彼は、葉子の夫で現社長の輝夫を疑い、水族館に手がかりを捜していたのだ。連続殺人の容疑がかかる輝夫は、今泉の足跡をたどり鳥羽水族館に赴いた。だが輝夫も、風船の揺れる自宅の一室で変死体に。輝夫の残したジュゴンの観察メモに秘められた真相とは…。八木沢警部補の推理が冴える。
燃え立つ炎のような草紅葉に彩られる尾瀬の秋。ドライブの足を伸ばして草原を訪れた人材派遣会社スタッフの美雪は、品のある初老の女性と知り合う。だが彼女は美雪に「亡くなった娘によく似ている」と告げ、手作りのミズバショウの造花を遺して失踪した。一方、奥多摩の山中で美雪にそっくりな女性の死体が発見され、しかもその胸にはミズバショウの造花が…。警視庁捜査課警部の叔父とともに真相を追う、美雪の事件簿4篇。