著者 : 山内直海
静かな時間と彼女のハミング静かな時間と彼女のハミング
「あの1か月のあいだに、何があったの?」洋子は僕のプロポーズに答えるかわりにそう言った。何かを一息に吐き出すように。洋子の知らない1か月。4年前の8月。真水と過ごしたあの幻のような夏。月明からに浮かんだ洋子の表情に、ふいに忘れかけていた真水の表情が重なって見えた。真水、と僕は心のなかで、静かに彼女の名前を呼んだ。-『海の真水』ほか、穏やかに時が流れる3つの物語を収録。
相対性恋愛論相対性恋愛論
満月を見ていた。「きれい」湖のほとりで、私は彼にそっと寄りかかる。その時、ふいに風が吹いて月が消えると、彼は私の腕をそっと引き離した。「月にいって、アインシュタインみたいな物理学者になりたいんだ」そして、彼は静かに遠ざかっていく…。-表題作『相対性恋愛論』ほか、優しく切なく、そして幻想的な5つの恋物語を収録。
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