著者 : 文倉十
蝕の予言を巡り争ったルウィック同盟を説き伏せ、見事に天文学者アマレットの奪還を成し遂げたコルとミューリ。 しかしそれは、デュラン選帝侯の威信をかけた計画が白紙に戻ることを意味していた。苦難の中、アマレットがもたらした一縷の希望ーーかつて古代帝国軍の北への行軍を阻んだとされる月を狩る熊が月を落とした地の伝承だった。 もし教皇庁まで通ずる新道の開削が為せば、侯の権威と命脈を保ち、教皇庁の喉元に刃を突きつけることとなる。 ゴブレアとバーリンドの選帝侯も加わり、南北に分断する要衝の調査に乗り出したコルとミューリ。だが、二人の前に月を狩る熊の伝承者が立ちふさがるーー!
エシュタットを騒がせた“薄明の枢機卿”を騙る偽者を成敗し、身に余るふたつ名を背負う覚悟を決めたコル。傍らに並び立つ、人呼んで太陽の聖女・ミューリもどこか誇らしげな様子。 公会議に向けた準備も大詰めのところ、二人の下にエーブの部下で羊の化身・イレニアが投獄されたとの報せが届く。 しかも投獄先は山岳都市ウーバン、七人の選帝侯のうちの一人、傭兵王を名乗るデュラン選帝侯が治める要害の地。 姉と慕う彼女の窮地を救わんと鼻息荒いミューリは、早速イレニアを助けに行こうと計画を練るが、どうやらイレニアは選帝侯お抱えの天文学者を誘拐した罪に問われていてーー。
善治郎とユングヴィ王子は、神秘のヴェールに包まれた都市ウトガルズへと招かれた。氷原の中にある都市ウトガルズで二人を迎えたのは、ウトガルズの王とも言える代表のロック。ロック代表は善治郎に、一つの依頼をする。巨人族が住む異界『ウートガルザ』への移動手段を確保してほしい、と。交渉を重ねた末、善治郎は独断でその申し出を受け入れる。ウトガルズから帰国を果たしたユングヴィ王子は、父のグスタフ王に自分の第二夫人としてカープァ王国の女性を迎えるよう訴える。カープァ王国と善治郎の価値を認めたグスタフ王は、次期国王であるユングヴィ王子の側妃を南大陸のカープァ王国から迎えることを許可するのだがーーー。
狼の化身ルティアが抱えていた心の呪縛を解き、教科書を巡るアケントでの争いに終止符を打たせたコル。目的であった聖典印刷の目処も立ち、いざ公会議に向け、コルたちは準備を始めるのだった。 全世界の聖職者が集う公会議、来るべき論戦を優位に進めるべく、一人でも多くの味方集めが重要となる。だが、その出鼻をくじくように“薄明の枢機卿”の名を騙る偽者が現れたとの報せが届く。 聖堂都市エシュタットの圧政に立ち向かう“薄明の枢機卿”の名の許に建てられた希望の街オルブルク。かねてからの謙遜が仇となり、自分が本人であると証明できないコルは決断を迫られるーー。
世界を変える大冒険へと向かった娘のミューリを追って、旅を続ける賢狼ホロと元行商人のロレンス。だが借金で悩むサロニアの窮地を救ったロレンスの活躍が、思わぬ余波を生む。「貴重な森が失われる」と、森林監督官から詰め寄られてしまうのだった。トーネブルクの未来を思い森を切り開く決断をした領主と、先祖代々の森を守りたい領民。その両者を気遣うホロを悲しませないためにも、ロレンスは皆が納得する妙案を練ることになる。しかしそんな中、木材取引の相手、港町カーランの背後にはある女商人の影があって…。長編書き下ろしで贈る、賢狼と元行商人の幸せであり続ける物語、第7弾!
いがみ合う王子たちを馬上槍試合をもって仲裁したコル。ウィンフィール王国内での争いが終息したのも束の間、コルたちの前に使者が現れる。使者の目的は八十年ぶりに開催される公会議に、“薄明の枢機卿”の出席を請うものだった。 公会議開催の真偽確認をカナンに任せ、コルとミューリは聖典印刷の計画を進めるべく、資材の確保と新大陸の情報を求めて大学都市へ向かう。 そこはかつてコルが放浪学生として過ごした街。だが、その街を二分する大騒ぎが勃発し、その中心には"賢者の狼"と名乗る人物までいてーー!?
死者の乗る船が渡来する港町・ラポネルでの騒動を後にして、コルとミューリは再びラウズボーンへの帰路につく。教会の不正を糺し、王国との争いを収める決意を新たにするコル。賢狼の娘ミューリはというと、理想の騎士冒険譚を執筆するのに大忙しな様子で。そして、ラウズボーンへと降り立った二人を待っていたのは、ハイランドと教皇庁の書庫管理を務めるカナンだった。カナンは“薄明の枢機卿”コルの聖典俗語翻訳をさらに世に広めるため、教会が禁じた印刷術の復活を持ち掛ける。さっそく職人を探すこととなったコルとミューリ。だが、教会から追われる身の職人は協力する代わりに、『心を震わせる物語』を要求してきてー!?
善治郎と女王アウラは、ルクレツィアから双王国と『白の帝国』、そしてウトガルズの隠された歴史について知らされる。双王国は『白の帝国』の末裔であり、ウトガルズは古の巨人族の自治都市『ウートガルド』と密接な関係があると。看過できない情報に、女王アウラは一刻も早く、双王国のブルーノ先王との密議をこらす必要性を確信する。数日後、善治郎は双王国に『瞬間移動』する。表向きは鍛冶師ヴェルンドへの弟子入りを熱望するマルガリータ王女を迎えるためだが、本当の目的は、秘密裏にブルーノ先王をカーブァ王宮に飛ばし、女王アウラとの極秘会談を成立させるためであった。
年代記に語り継がれるほどの活躍で、借金に悩むサロニアを救った賢狼ホロと元行商人のロレンス。その御礼の代わりにと、二人に贈られたのは、誰もがうらやむ貴族特権だった。身に余る報酬に浮かれているロレンスを尻目に、どこかきな臭さを覚えるホロとエルサ…。そして、特権で譲り受ける土地を調べに行くと、そこは大蛇の伝説が残る、いわくつきの土地で!?さらに、いざ、夏の山へ!ロレンス一家のピクニックを描いた『狼と実りの夏』に加え、新たな友人と旧友との別れを描く書き下ろし短編『狼と夜明けの色』も収録。賢狼と元行商人の幸せであり続ける物語、第6弾!
破滅へと向かう聖クルザ騎士団の窮地を救ったコルとミューリ。彼らの騎士としての在り方に絆の答えを見つけたコルたちは、二人だけの騎士団を結成する。憧れの騎士という肩書きに夢中になるミューリだが、立場上コルに素直に甘えられなくなり、頭を脳ませることに。そこにハイランドから、麦の大生産地・ラポネルの調査依頼が舞い込む。賢狼の娘ミューリは麦の産地と聞いて意気込む。しかしその地の元領主ノードストンには、悪魔と取引しているという不穏な噂があった。そして、王国と教会の争いを解決する可能性を秘めた新大陸発見への手助けを“薄明の枢機卿”コルに持ち掛けてきてー!?
神をも畏れぬ女商人エーブの謀略を見事に退け、王国と教会による戦争の危機を回避したコルとミューリ。騒動も落ち着く頃、コルは自らを慕ってくれるミューリとの関係をはっきりさせなければとあれこれ知恵をひねり、ある方法を思いつく。そして調べもののため、かつて訪れたブロンデル修道院を目指す道中、コルとミューリは行き倒れの少年ローズと出くわすことに。彼はミューリの尻尾が飛び出るほど高名な聖クルザ騎士団の見習い騎士で、世界最強の騎士団が、悪名高い“薄明の枢機卿”のせいで壊滅状態だと訴えてきてー!?一時の休暇のはずが、またしても大事件勃発のシリーズ第5弾!
長旅を終え、ついにフレア姫の祖国、ウップサーラ王国に到着した善治郎。グスタフ王との会談の場で、善治郎は大陸間貿易と両国友好の懸け橋としてフレア姫の側室入りを提案する。しかし、第一王女の側室入りなど当然受け入れられるはずもなく、その場に居合わせた人々から大きな反発を受ける。中でもフレア姫の兄、エリク王子は善治郎に強い敵愾心を抱き、『成人の証』も立てていない男に妹はやれない、と主張する。フレア姫に婚姻を申し込むため、善治郎は『成人の証』を立てるべく、雪の残る山へと獲物を仕留めに向かうのだったー。
湯屋をセリムたちに任せ、再び旅に出た元行商人ロレンスと賢狼ホロ。道中、小銭両替のため訪れたヴァラン司教領で、懐かしき人物ーーエルサとの再会が二人を待っていた。 司祭となったエルサは、教会の財産整理のため司教領に赴いたという。そして両替の見返りとして、一度踏み入れば生きては帰れない、呪われた山の調査をロレンスに頼む。そこには“錬金術師と堕天使”の秘密が隠されていてーー!? さらに、借金地獄に陥った町をロレンスが商人の勘で救う、経済ファンタジーの面白さが詰まった中編に加え、ホロたちの娘ミューリと、聖職者志望の青年コルの結婚式(!?)の書きおろし中編を収録。 幸せであり続ける物語、第5弾!
木造帆船での長く危険な航海の末、遂に『黄金の木の葉号』は北大陸に到着する。フレア姫の判断で、一行は『教会』の影響が比較的弱いという、ポモージエ港へ停泊することとなった。久しぶりの陸での生活に羽を伸ばしていると、買い物に出かけていた侍女のマルグレーテが、路地裏で孤児の少年に声をかけられる。なんでも、善治郎たちと同じ宿に泊まっている、ヤン司祭に言伝を頼みたいのだという。「放っておいたら大変なことになる」という少年の言葉を聞いた善治郎は、ヤン司祭に事の顛末を伝え、宿で共に話を聞くことになる。そこで少年が口にしたのは、なんと「『騎士団』がこの国を攻めてくる」という内容だった。
ウィンフィール王国第二位の港湾都市ラウズボーン。ニョッヒラを出て初めての大都市に心躍らせる賢狼の娘ミューリと、教会変革の使命を胸に燃やすコルだったが、二人を待ち受けていたのは、武装した徴税人たちだった。 ハイランドの機転で窮地を脱した二人。どうやら「薄明の枢機卿」と讃えられるコルの活躍が、皮肉にも王国と教会の対立に拍車をかけていることを知る。 このままでは、戦争を避けられない。打つ手無しの中、コルに助け船を出したのは、ロレンスのかつての好敵手、女商人エーブだった。 神をも畏れぬ守銭奴は、果たして敵か味方か。コルは教会、王国、商人の三つ巴の争いに身を投じるーー!
湯屋『狼と香辛料亭』を営むロレンスの悩みの種、それは家を飛び出していった可愛い一人娘、ミューリのことだった。 憔悴するロレンスを見かねたホロは、湯屋をセリムたちに任せ、娘を訪ねて十数年ぶりの旅に出ることに。 「くふ。楽しい旅になりそうじゃ」 たくさんの頼まれごとと思いを乗せ、荷馬車はゆっくりと進んでいく。 そんな旅の途中に立ち寄った町で、さっそくミューリの噂が耳に飛び込んでくる。それは、二人の知るお転婆娘とかけ離れた、“聖女ミューリ”の噂でーー!? 書き下ろし短編『狼と旅の卵』に加え、電撃文庫MAGAZINE掲載短編4本を収録した、幸せであり続ける物語第4弾!
アウラはかねてから検討していた「宰相」と「元帥」の役職を置き、宰相にレガラド子爵フィデルを、そして元帥にプジョルを任命した。アウラの国務の負担が減ることは喜ばしくもあったが、それは同時に、望まない方向に国が進みかねない危険性も孕んでいた。さらに、双王国の対応から北大陸への懸念を抱いたアウラは、フレア姫に同行する形で、ウップサーラ王国を訪問して欲しいと善治郎に告げる。しかし、木造帆船で数ヶ月にも及ぶ危険な航海に出ることは、善治郎にとって受け入れがたい話。そこでアウラは、少しでも安全な航海にするために、なんと『瞬間移動』の魔道具を作ってもらおうと提案するのだった。
わっちに惚れておるのは、ぬしのほうじゃからな。 ホロとロレンスが紡ぐ、旅の続きの物語、第3弾! 湯治客で賑わう短い夏も終わり、湯屋『狼と香辛料亭』は秋を迎えていた。山々に囲まれたニョッヒラの秋の味覚を堪能しようと、いつも以上に張り切るホロとあきれ顔のロレンス。 山での散策を終え、籠いっぱいの土産とともに二人が湯屋に戻ると、入り口にはたくさんの人だかりが。 「なんじゃ、よくわからぬが、色々な獣の匂いがしんす」 湯屋『狼と香辛料亭』にやってきた、時季外れの客たちの目的とはーー。 書き下ろし短編『狼と収穫の秋』に加え、電撃文庫MAGAZINE掲載短編4本を収録した、湯屋での物語第3弾。
妊娠中の女王アウラに『治癒術士』を呼ぶため、再び双王国へ『瞬間移動』する善治郎。さらに、フレア姫も長期航行を補助する魔道具を求め、双王国へやってくる。双王国に到着した善治郎を最初に待っていたのは、フランチェスコ王子だった。カープァ王国で作製された『ビー玉』を渡され、驚愕するフランチェスコ王子。だが、同時にフランチェスコ王子も、ある構想を打ち明け、善治郎を驚愕させた。その後、聖白宮でのベネディクト法王との面談は問題なく終わり、約束通り『治癒術士』であるイザベッラ王女がカープァ王国に来ることが決定。数日後、フレア姫と一緒に善治郎は、魔道具購入の交渉に赴くのだが…。
聖職者志望の青年コルの旅の連れは、「お嫁さんにしてほしい」と迫ってくる賢狼の娘ミューリ。海賊の島から出た二人は、嵐に巻き込まれウィンフィール王国の港町デザレフにたどり着く。 教会が機能していないその町で、コルは「薄明の枢機卿」と呼ばれ、まるで救世主のような扱いを受けることに。 そしてコルはミューリの求愛に向きあうべく、自らを「兄様」と呼ぶことを禁止し、関係を変化させようとするのだった。 そんなコルたちの前に、イレニアと名乗る商人の娘が現れる。彼女はなんと羊の化身であり、“ある大きな計画”に協力してほしいと持ちかけてきてーー?