著者 : 村上凛
「なんで、あたしは鈴木君と仲良くなれないのよ!その上、彼女までいるって判明するし…。超不公平!」夏休みが終わり、二学期が始まってから恋ヶ崎桃の機嫌が悪い。マジで最悪。他の人にはそういう態度を見せないくせに、俺にだけブチ切れてくる。鈴木に彼女はいないことを俺が確認してきたのに、信じようとすらしねえ。それより俺は長谷川のオタク疑惑と、桜井さんが俺を気に入っているって噂をおまえに相談したいんだよ。あー、もう!頭に血が上ったからって、なんであんなこと言っちまったんだ俺。「協定関係、なしにしたっていーんだぞ」って。
コスプレイベント以降、恋ヶ崎とはなぜか気まずい状態になり、逆に俺のことを避けていたばすの桜井さんからは、やけに好意的なメールが届くようになった。『柏田君って、桃ちゃんのこと好きなの??』あのギャルな恋ヶ崎のことを好き?絶対ありえねえ!俺が好きなのは長谷川だ。あいつと連絡を取りたかったのは長谷川とのデートが不安だったからで…。結局あいつに頼りっきりだな…俺。鈴木の欲しがってる同人誌を手に入れるために夏コミへ行く?おまえひとりじゃ無理に決まってんだろ!オタクの祭典マジなめんな。仕方ねえから、手伝ってやるよ。
美少女でギャルだけど、オタクになりたい恋ヶ崎とオタクだけど、リア充になりたい俺は協力関係を結んだ。…のだが。なりたいといって、すぐになれる訳も無く、俺は相変わらずダサイらしいし。あいつはあいつで俺の薦めた漫画やアニメは「美少女がパンツ見せてきても、面白くないのよ!」とのこと。そんな恋ヶ崎が急に「女の子のオタク友達が欲しい!」と言い始め、漫画研究部へ。そこで出会った一見地味(だけど巨乳!)な女子と意気投合し、コスプレをするらしい。しかもコスプレ費用を稼ぐためにメイド喫茶で働くことにした!?おまえ男が苦手なのに大丈夫なのか?いろいろ心配なんだが、俺をリア充にすることも忘れんなよ。
高校入学をきっかけに、俺は「隠れオタク」になって、平和な学園生活を謳歌すること、そしてあわよくば、清楚で可愛らしい彼女を作ってリア充になると決めていたーはずなのに。全てはあいつ、恋ヶ崎桃のせいだ。ギャルで、横暴で、スイーツ(笑)、確かに可愛いけど、オタクになんか興味なさそうなあいつを、なんで俺がオタクになるための協力をすることになってんだよ!萌えアニメを見せれば、「ねえ、これいつ面白くなんの?」秋葉原に行けば、「うわっ何なの、このエロい絵とか…」最終的には「マジキモいありえないんだけど!」なおまえがオタクになれるわけねえだろ!あと俺とのあの約束はどうなったんだよ!第2回ネクストファンタジア大賞金賞受賞作。