著者 : 柳野かなた
“鉄錆山脈”での死闘と、帰還の後。ウィルを待ちうけていたのは、めでたしめでたしの幸福な日々でなく、おそるべき更なる脅威でもなく…なんてことはない、ありふれた日常の日々だった。頼れる戦友、剣士レイストフとの友誼と決闘。吟遊詩人ビィと、雪積もる魔法の森での冒険。あるいはいにしえの、無敵の巨人との戦い。そして、灯火の神との祈りと対話。-これは聖騎士の綴る、ひと冬の日々の記録。
かつて滅びた死者の街ー人里離れたこの地に一人の生きた子供、ウィルがいた。少年を育てるのは三人の不死者。豪快な骸骨の剣士のブラッド。淑やかな神官ミイラのマリー。偏屈な魔法使いの幽霊のガス。彼ら三人に教えを受け、愛を注がれ少年は育てられる。そしていつしか少年は一つの疑念を抱く。「…この『僕』って、何者なんだ?」ウィルにより解き明かされる最果ての街に秘められた不死者たちの抱える謎。善なる神々の愛と慈悲。悪なる神々の偏執と狂気。「約束だ。ちょいと長いが、語ってやる。多くの英雄と俺たちの死の…そして、お前がここで育った話でもある」-その全てを知る時、少年は聖騎士への道を歩みだす。
ここはかの英雄が世界を破滅より救った空中都市“アーケイン=ガーデン”。かつて存在した「地上」は闇に汚染され、生きとし生けるものの世界は、天上の大海原へと移っていった。冒険者達は飛空挺で旅をし、魔の眷属を倒し人類圏を拓きーそれはグレイ・アクスターも同じくだ。「スリヤっ!行ったぞ」「分かってるっ、大繁盛だねっ!」彼は今日も精霊族の少女・スリヤと共に“導書院”から発布される掃除の依頼へと赴いていた。未熟ながらも日々の仕事をこなし、冒険者としての腕を上げていた…ある日の事だった。彼らが出遭ったのは警戒の呼びかけがされていた、かつて英雄が滅ぼした邪神の核“黒の破片”を得た眷属で!?