著者 : 棚花尋平
日本から異世界に召喚され魔王を倒した勇者ロブ。彼は厄介事を避けるため勇者を引退し、一人辺境の地で年金暮らしを送っていた。だが二年後、なぜか指名手配されてしまう。真相を確かめるべく王都に向かったロブだったが、道中謎の少女アルセリアに「『この世界』から出ませんか」と誘われる。当初は胡散臭さからその誘いを断ったが、己を指名手配したのが救ってやった王国側からだと知り、怒りや呆れを通り越したロブは、面白半分で少女の誘いを受けることにする。そして、目の前に現れるファンタジー世界に似つかわしくない列車のシルエット。ロブは異世界と異世界を繋ぐという『界境列車』に乗り込み、アルセリアとともに新たな世界へと旅立つのであった。
アルワラ族が引き起こした東サウランの内乱からおよそ二年。国際会議の場に乗り込んだ蔵人はその後、勇者たちの興した国であるヤオヨロズで用務員として働くこととなった。そして蔵人は誰憚ることなく生きるために、すべてを清算するべく事実の審判に臨む。一方で、蔵人を権力争いに利用せんとするアルバウムとヤオヨロズ国内の勢力、先の内乱でリサを亡くしたコースケの真実の探求、さらにはかつての教え子を案じて押しかけたタジマなどのせいで、蔵人の身辺は刃なき剣呑さを増していく。混沌とする新興国ヤオヨロズを舞台に、支部蔵人という男の物語がここに完結する!
砂漠で生き砂漠で死ぬのも悪くない、そう思い始めていた蔵人の前に、勇者たちを乗せた船が現れた。そこにはなぜか、イライダやヨビ、アカリの姿もあり、蔵人は勇者たちとの対面を決断する。謝罪や無関心、敵意とさまざまな反応を見せ、時に蔵人と衝突するも、勇者たちは目的の地へと向かい砂漠をあとにする。一方イライダは、自身の母親を捜しに来たのだという。義理を果たすべく協力する蔵人。その後、勇者たちにその存在が露見してしまったことから、東端に最も近いオアシスの街に居を移すこととなる。ところが、そこにもやはり勇者の影が。そして果てることのない部族間の抗争。砂漠で生きていくことを決めた蔵人の戦いは続く…。
ギリギリの駆け引きでリュージの魔手から脱した蔵人は、ついにサウラン砂漠へと到達し、どこから手を付けるべきか途方に暮れていた。そんな蔵人の前に、骨人種の少女が姿を現す。渡りに船の好機と思われたが、種族と宗教の差からすれ違い、蔵人は苛立ち紛れに砂漠へ足を踏み入れてしまう。当然のごとく遭難してしまう蔵人だが、偶然にも砂舟に乗って生活するダークエルフたちに助けられ、そのまま行動を共にしていくこととなった。そこは中世どころか中世以前の文化圏。蔵人は文化や習俗の違いから、敵どころかダークエルフとも衝突しながら日々を送る。砂漠という過酷な環境と生活に直面しつつも、己の生き方にあったこの地は、求めていた安住の地なのだろうか。砂丘を睨む蔵人の自問自答は続く…。
エスティアの仇であるファンフとの戦いに決着をつけた蔵人は、再び昇格試験に挑み、どうにか七つ星に昇格する。だがそこに、怪盗討伐の強制依頼が舞い込んだ。蔵人は八つ星降格と依頼を天秤にかけるが、躊躇なく降格を選び、日常へと戻っていく。そんな蔵人の前に、突如リュージという暴虐の勇者が現れる。賞金稼ぎとして単独で活動しているリュージにとって、加護を奪われた勇者である蔵人には大きな利用価値があった。勇者の名誉を守りたいハヤト派と、勇者を道具として使いたい反ハヤト派、どちらに売っても多大な利益が見込める。逆に蔵人は、どちらに転んでも待っているのは死か、監禁。見事なまでに、詰んでいた。そしてリュージに従わざるをえなくなった蔵人は、一度断った強制依頼を受け、怪盗討伐作戦へと向かうはめになるのだが…。
蔵人は足止めを食らっていた。 サウラン行きの船に乗るため、ラッタナ王国から徒歩で北上し、大きな港マルノヴァにたどり着いた蔵人だが、次の便は百日後だという。 しかたなくマルノヴァで逗留を決め込み、ハンター協会へ足を向ける。しかし、相変わらず厄介ごとは勝手に舞い込んでくるようだ。 ヨビの義父の一門、ルワン家の娘ファンフが、一門の仇として蔵人に決闘を申し込んできたのだ。 捨て身の速攻でファンフに勝利するも、とどめを邪魔され、街での宿泊と滞在にリスクが生じてしまう。 結局、街の外、飛竜のナワバリである竜山を隠れ巣にすることとなった。 そんななか、蔵人はエスティアという娼婦と出会い、彼女からの依頼をこなしていく。 ハンターとしても、男としても充実した日々を送る蔵人。 だが、たった一振りの凶刃によって、それは儚くも消え失せるのであった……。
蔵人は予てよりの因縁の相手、勇者ハヤトとのどつきあいに勝利し、サレハドをあとにした。新天地を求め、海を渡る。-が、遭難してしまう。船は『精霊の悪戯』と呼ばれる嵐に遭遇し、大破。蔵人たちは海に投げ出されてしまう。浜に打ち上げられ、衰弱していた蔵人を待っていたのは、燦々と降り注ぐ太陽の光と白い砂浜、鬱葱としたジャングルに魔獣の襲撃。地元のハンターの助けもあり、なんとかピンチを脱したものの、同行していた雪白やイライダとははぐれ、魔導書は全滅と、散々なスタートを切る蔵人であった。新章突入!舞台は一転して南国!そしてヨビという奴隷の女との出会いが、蔵人を再び面倒事へと誘っていく…。
無茶な強制依頼を出した支部長をやり込めてから九十日。蔵人は相変わらず塩漬け依頼をこなす日々を送っていた。そんなある日、協会で蔵人の『加護』を盗んだハヤト・イチハラ(一原颯人)のパーティメンバーと遭遇してしまう。なんとか気付かれずにその場をやり過ごした蔵人は、ハヤト本人が近くまで来ていると察知し、山に引き籠もった。五日後、アカリの無実を証明するために奔走したマクシームが帰還。彼が引き連れてきた『月の女神の付き人』という一団と、怪物による村の襲撃事件をきっかけに、その後蔵人とハヤトは対峙することとなる。果たして蔵人のとる行動とは。そして、アカリの審議の行方は…。勇者と用務員さんの因縁の対決がついに始まる!?
その日、市立桜ケ丘高等学校の教師と生徒、用務員、計七十九名は異世界に召喚された。異世界へ誘われるさなか、神の慈悲により、七十九名は加護を与えられる。彼の地で生きていくうえで必要な適応能力、言語、後に己の能力となる光り輝く剣。そして、次々と転移していく七十九名の異世界生活が始まる…はずであった。用務員、支部蔵人。彼だけが違っていた。神より与えられた剣を一年の男子に取られ、周りの嘲笑のなか呆然としていたのである。このままでは野垂れ死ぬ。一人転移に抵抗し、蔵人は神に願う。-失った力を取り戻してくれ。それがだめなら奴等とは別の地に…。その願い叶い、蔵人は一人だけ異なる地より冒険の幕を開けるのであった。