著者 : 渡来ななみ
桜の名所・千里町に語り継がれる言い伝えーそれは、時を超えて大切な人との縁を結ぶ“トキノサクラ”の伝説。季節は春。五歳の悠希は、満開の桜の下で歌う名前も知らない歌姫と出逢った。桜が咲く間だけ姿を現す彼女は、悠希の悩みを未来を見通すように言い当ててしまう。それから春が巡り、高校生になった悠希が入部した合唱部に、あの歌姫にそっくりな顔をした女の子がいて…。永遠の桜に導かれた出逢いと別れの奇跡が交差するとき、きっとあなたは“涙”する。
色とりどりの瓶が並べられた、まるで博物館を思わせるような研究所。ここでは空に還るたましいを、ガラス瓶に保存してくれる。そして不思議なことに、瓶に閉じ込められたたましいは、人生で最も鮮烈な、想い出の色に染まる。だから、この研究所には想いと事情を抱えた人々がやってくる。たましいの色に込められた、一番大切な人の、最後のメッセージを求めて。「ついに、来てしまったわ。-昌樹、許してくれる?」今日もまた一人の女性が、願いを胸に研究所を訪れー。
睡眠こそ至上の喜びと豪語する少年、葵には、幼い頃から誰にも言えない大きな秘密があった。朝起きると、隣に住む幼なじみが変わるー葵は眠るたびに並行世界を行き来してしまうのだった。いつも元気な真宝と、優しいお姉さんのような微笑。二人の幼なじみがいる生活はずっと続く…そう思っていた。だがある朝、葵の何気ない一言をきっかけに、二つの世界は少しずつ「重なり合い」はじめる。さらに、葵の秘密を知るもう一人の不思議な幼なじみ・舞花が現れ…やがて世界の選択を迫られた葵が選ぶのは、真宝か、微笑か、それとも。夏の終わりに贈る、SF青春ラブストーリー。
天文学者の父親とともに遠く南国の孤島に暮らしている少女・海良。ある日、彼女が闇夜の草原で出会ったのは、星空から降りたった不思議な少年・τ(タウ)だった。「僕という天体は、宇宙を未来から過去へと進んでいる。でもこの姿を浮かべていられるのは、ほんの七日間だけ。だから今夜は僕にとって、君との最後の夜なんだよー」去り際に残した、その謎めいた言葉通りに、海良は毎夜タウと出会い続ける。約束された出会いの、避けられない別れの時へ向かってー。