著者 : 藻野多摩夫
記憶を失った自動人形“オートマタ”の少女リーナ。出来損ないの人形技師でトラブルメーカーのレミ。百億歳を過ぎた太陽が燃え尽きようとする凍える世界で二人は出会った。「ねえ、レミ。私、もうすぐ死んじゃうかもしれないんだ」「リーナは私が直してあげるから!」人類の文明が滅んだ世界で、頼る者もいない。それでも壊れかけた人形の死を食い止めるため、二人の少女は東の果てにあるという“楽園”を目指す。-きっと間に合わない。でも、最後の最後までレミと一緒にいたい。終わりゆく世界で二人の旅は続く。
妖精に春を盗まれた街、ベン・ネヴィス。この常冬の街で灰色の生活を送っていた少年・ウィルは、ある日、雪の中にひとりでたたずむ少女・ビビと出会う。「フェアリーテイル…か」「妖精に盗まれたの。私の大切なもの。私、それを取り返したい!」一人前のフェアリーテイルになって、妖精から盗まれたものを取り返したいビビと、同じく大事なものを失っていたウィル。どこか似たところのある二人は惹かれあい、お互いの“失われたもの”を取り戻す旅に出ることを決めたー。これは、できそこないの少女と少年が綴る、妖精を巡る冒険譚。
「地球人類は火星を見捨ててはいません。我々は皆さんを助けに来ました」オリンポス山の麓に不時着した謎の宇宙船に乗っていたのは、地球の全権大使を名乗る少女・メッセだった。八十年ぶりに再開される地球と火星の交信のため、エリスは彼女を火星の首都・エリシウムへと送り届けることになる。目的地に至るため、過去の戦争で汚染された死の渓谷“ルクス・グラーベン”を渡る二人の危機を救ったのは、クロの面影のあるレイバーだった。「お願い!クロ!目を覚まして!」そして死の渓谷に隠された施設でエリスたち彼女が見たものとはー。
火星へ人類が本格的な入植を始めてから二百年。この星でいつからか言い伝えられている、ある都市伝説があった。オリンポスの郵便ポスト。太陽系最大の火山、オリンポス山の天辺にあるというその郵便ポストに投函された手紙は、神様がどこへでも、誰にでも届けてくれるという。-そう、たとえ天国へでも。度重なる災害と内戦によって都市が寸断され、赤土に覆われたこの星で長距離郵便配達員として働く少女・エリスは、機械の身体を持つ人造人類・クロをオリンポスの郵便ポストまで届ける仕事を依頼される。火星で最も天国に近い場所と呼ばれるその地を目指し、8,635kmに及ぶ二人の長い旅路が始まるー。