著者 : 遠野海人
天国に近いこの場所は、今日も命のにおいで満ちていたーー。 緩和ケア病棟で看護師をする倉田さんの仕事は、余命宣告をうけた患者さんのケアをし、その最期の時まで寄り添うこと。チームカンファレンス、介助、エンゼルケア。ときに複雑な事情を抱える患者と家族に向き合いながら、いくつもの死を見送ってきた。 この静かな病棟で、ある日起きた幽霊騒ぎ。出所不明の噂は、患者、主治医、新人看護師、配達中の売店スタッフまでを巻き込んで、棟内に波紋を広げていき……。誰にも等しく訪れる〈最後の夜〉を描いた、号泣必至の感動作。 一章 天国に近い場所 二章 幽霊の咲く季節 三章 余命の使い道 四章 そして最後の夜が来る エピローグ
幸運をくれると人気の占いアプリ“孤独な羊”にはある噂が。画面上を行きかうカラフルな羊たちの中に、もしも黒い羊が現れたら、どんな願いも叶うらしい。それが誰かへの殺意だとしてもー。同級生に復讐したい少年。祖母の介護に疲れ果てた中学生。浮気した彼氏を殺したい女子大生。周囲に迷惑をかける自分を消したい新入社員。理想の死を追い求める少女。余命宣告を受けたサラリーマン…。アプリに集う人々の、いくつもの眠れない夜と殺意を描いた15編の短編集。
高校生になった智成の日常は少し変わっている。死者が見えるのだ。吹奏楽をやめ、早朝バイトをする智成は、夜明けには消えてしまう彼らとの静かな時間が好きだった。だが、親友の妹・優子との突然の再会がすべてを変える。「文化祭で兄の遺作を演奏する手伝いをしてくれませんか」手渡されたそれは、36時間もある壮大な合奏曲でー。兄を失った優子。家族と別れられない死者。後悔を抱える智成。凍り付いていたそれぞれの時間が、一つの演奏に向かって、今動きはじめる。第27回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞。