宵を待つ月の物語 一(1)
高校生の坂木夜花(よはな)の住む町は、魔を退治する神祇官(かむつかさ)の一族である社城(やしろ)家が絶大な権力を持つ。
両親を亡くし祖母と住む夜花は、夏のある日に遠縁だからと社城家の宴会にかり出される。けれど手伝いの最中、事故で池に落ちてしまう。
騒ぎを聞きつけ現れたのは美貌の社城家の当主候補。彼は「僕の、つがい」と夜花に歩み寄りーー後ろにいた同級生の少女を抱き上げた。
夜花は誰にも顧みられず、濡れ鼠の惨めな姿のまま池の中で呆然とする。
けれど不思議な美しさの少年・千歳が夜花を助け、社城家にある自分の家に匿ってくれた。さらに千歳は夜花が神がかりの力を持つ《まれびと》であると見抜く。
夜花は社城家に保護され千歳を護り手に、術師の仕事の手伝いをすることに……?
「わたしの幸せな結婚」の顎木あくみが贈る、神と人と運命の恋物語。
プロローグ 異境と人境のあわいにて
一章 「宴会なんて、二度とごめんだわ」
二章 「トンネルの怪異ってベタだよね」
三章 「乙女心を弄ばれた。呪い、許すまじ」
四章 「みんな、世話焼くの好きね」
五章 「あんたの行動、この頃からいちいち冷や冷やするんだよ」
六章 「家族でもわかりあえないことはあるよ」
七章 「私たちはきっと同じものを求めてた」
八章 「千歳くんは隠しごとばっかりだから」
エピローグ 終わりの始まりを眺める時
あとがき