海のカナリア
近所に住む小五女子の城ヶ崎君は、朝から鯨を見に海へ行こうと誘ってくる、行動力だけで生きているような少女だ。そんな彼女に言われるがまま、一緒に海へ向かう高二のぼく。十一歳と十七歳、恋愛、どはないと思う。二人で過ごすいつもの夏の水曜日。こんな穏やかな日々がずっと続けばいいのにー。夏の朝、目が覚めたらいつものように鏡の前で情報整理。「海野幸、十七歳、性別女性、二年C組、両親は健在ー」顔にかかる髪を払い、ぼくを私に切り替える。曜日を確かめると水曜日。さぁ、今回も三日くらいがんばろうー。そして城ヶ崎さんは宣言する。「この世界を破壊したい」と。閉ざされた海辺の街で、ぼくと彼女は今日も出会う。