制作・出演 : 池谷薫
世界で初めて“日本軍山西省残留問題”に正面から斬り込んだ衝撃のドキュメンタリー! 私たちは上官の命令に従い、蟻のようにただ黙々と戦ったー。 終戦直後の山西省で何が起こっていたのか? 【内容】 中国山西省で終戦を迎えた北支派遣軍第1軍の将兵2,600人は、武装解除を受けることなく残留。国民党軍の部隊として、戦後4年間共産党軍と戦い、550人が戦死した。生き残った者も700人以上が捕虜となり、ようやく引揚げることができたのは、日本が高度経済成長に突入しようとする昭和30年頃のことだった。“軍の命令で残った”と主張する元兵士らは“志願による残留”とみなされ、戦後補償に応じない国を訴え続けている。 第1軍司令部軍司令官によって行われたという歴史上類を見ない“売軍行為”は、多くの日本人にとって知られることの無いまま、第二次世界大戦の記憶の風化と共に歴史の闇に葬られようとしている。本作は、戦争の被害者でもあり加害者でもあるひとりの老人・奥村和一が、“日本軍山西省残留問題”の真相を解明しようと孤軍奮闘する姿を追った衝撃のドキュメンタリーである。 奥村氏の体には、未だ無数の砲弾の破片が残り、左耳の聴力と全ての歯が失われている。しかし彼は、戦争によりそれ以上のものを奪われた。“初年兵教育”の名の下に、“肝試し”と称してなされた中国人の虐殺を巡るエピソードは、戦争がいかに人間の尊厳を破壊しつくすかを如実に物語っている。真実を見極めようとする奥村氏の中国への旅は、この問題自体を黙殺しようとする国家に対する戦いと、侵略戦争の加害者としての贖罪という二重の意味に彩られる。これまで妻にさえ語ることのなかった自らの戦争体験を明らかにすることで、彼にとっての戦争に決着をつける道を見出す奥村氏の姿は、戦争責任を省みることなく、総括することもせずに歩んで来たこの国の歪んだ像を際立たせる。 監督は、テレビ・ドキュメンタリーのディレクターとして数多くの作品を手がけ、モンテカルロ国際テレビ祭ゴールデンニンフ賞受賞などの経歴をもつ池谷薫。『延安の娘』に代表されるように、中国での取材活動を積極的に行っている。資金の一部を全国の有志からのカンパで補い完成した本作は、試写を見て感銘を受けたボランティアの活動の甲斐あって、全国各地で上映され、その波紋の輪を静かに広げている。見ることで知り、知ったことで何かが変わる。『蟻の兵隊』とは、まさにそういう映画だ。
ベルリン、シカゴ、プラハ、香港…世界を涙で包んだ感動の傑作ドキュメンタリー!! “聖地”に置き去りにされた娘は、それでも一目、実の親に逢いたかった ベルリンをはじめ世界各国の映画祭で上映され、惜しみない賞賛を浴びた感動作!文化大革命が残した傷跡と、その闇に飲まれ翻弄され続ける人々に光をあてた傑作ドキュメンタリーが、待望のソフト化。 黄土高原が果てしなく続く“中国革命の聖地”、延安。その貧しい農村で育った何海霞(フー・ハイシア)は、自分を棄てた実の親を探していた。彼女の両親は、文化大革命の折に下放した紅衛兵だった。彼らの間では恋愛さえも禁じられ、違反者は“反革命罪”として処罰される時勢であったため、海霞は生まれて20日で子供のいない農家に養子に出されてしまう。黄玉嶺(ホアン・ユーリン)もまた、かつての下放青年のひとりだった。生みの親を探す海霞の協力者である彼には、国家により子供を中絶させられたという悲痛な過去があった。海霞の親探しに奔走するなか、彼は無実の罪で投獄されたという古い仲間の声に衝き動かされるように、冤罪事件の真相究明にも乗り出す。 失われたアイデンティティと、人としての尊厳を取り戻すため、封じ込められた歴史の暗部に足を踏み入れた市井の人々の苦闘を描く本作は、『蟻の兵隊』の池谷薫の初監督作。当初はNHKのハイビジョン番組として2年に渡る取材を経て制作された。170時間にも及ぶ撮影テープは、02年度芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞した吉岡雅春が編集。人物の複雑に揺れる心理を、喜怒哀楽を絡ませ詩情豊かに切り取っている。音楽は、巨匠チャン・イーモウ監督の『初恋の来た道』や『この子を探して』などを手がけた三宝(サン・パオ)。 親子の再会、イデオロギーに翻弄された青春…30年に渡る封印を解き、忌まわしい記憶と対峙する人々の姿に心を揺さぶられる、感動の物語。