制作・出演 : オットマール・スウィトナー
スウィトナー&N響の70年代前半の録音。壮年期のスウィトナーがエネルギッシュでスケールの大きな演奏を繰り広げる。シューベルトにふさわしいしっかりとした歌も聴ける。ただしライヴゆえ、オーボエなどいささか不安定に感じられるパートもある。
1974年NHKホールでのライヴ録音。スウィトナーのスタイルは知情意のバランスがよくとれている。よく言えばそうだ。この第4番ではそれが功を奏す。天国的な至福感と清楚な美しさが際立ってくる。第二楽章の室内楽的アンサンブルの妙、第三楽章の柔和な音色と歌わせかたは聴きもの。
スウィトナーの初レパートリーというだけではなく、この日がこの曲のN響初演という記念すべきライヴ。ミスは多少あるが、全体を通じて非常にテンポよく生き生きと進んでいくし、第2楽章の深い音色も印象的。スウィトナーのブルックナーは再認識されるべき。
名誉指揮者として、N響のメンバーからも慕われていたことが、生真面目な演奏からひしひしと伝わってくる。誠実で真摯な「アイネ〜」は、聴き慣れた(飽きた?)この作品の真価をあらためて教えてくれるストレートな演奏。「ポスト」では、懐かしの木管の名手たちの活躍も聴ける。
2010年1月に87歳で亡くなったスウィトナーが、86年にN響と残したライヴ録音で、同シリーズの7枚のうち、最後の録音となる。音楽の構造的側面を重視したオーソドックスなスタイルで、柔和な「田園」に対して、「運命」では濃密なエネルギーの噴出が印象的。ともに風格を備えた円熟ぶりが魅力だ。
ドヴォルザークはまさにライヴならではの大熱演。ブラームスは反対に、恰幅の良い落ち着きがあり、ことに後半の楽章は黄昏と哀切の色が濃い。ちなみに後者はスウィトナーとN響の最後期の共演。虚飾なく誠実な音楽を聴かせてくれる良い指揮者だった。