ヴィラ=ロボス:交響曲全集
新鮮な驚きに満ちた作品を数多く書いたブラジルの作曲家、ヴィラ=ロボスは、交響曲も12曲書き上げており、規模の面からも20世紀の記憶されるべき交響曲作家であることはまず間違いの無いところなのですが、これまでなぜかあまり取り上げられることがありませんでした。
南米のバルトークとかストラヴィンスキーといった形容詞で語られることの多かった彼の交響曲については、セント・クレアのほか、ベン・ドールやペレスも録音をおこなっていましたが、全集の完成はセント・クレアが最初の名乗りを上げることとなりました。
といっても交響曲第5番については、スコアが相変わらず見つかっていないため、今回の全集プロジェクトでも録音計画に組み入れることはできなかったということです。
11曲の交響曲はそれぞれ個性的です。第1番は『知られざるもの』というタイトルを持つ29歳のときの作品で、『昇天』と題された第2番はその翌年に作曲されています。 『戦争』と題された第3番は、1919年、第一次世界大戦の終結を祝ってブラジル政府から作曲を委嘱されたもので、同じ年に書かれた第4番『勝利』、翌年書かれた第5番『平和』と共に、戦争三部作とも考えられます。
第6番は『ブラジルの山並みについて』というタイトルを持ち、初期とは明らかに異なるヴィラ=ロボス節ともいうべき音楽が楽しめます。第8番も似た傾向の作品と言えるでしょうか。
第7番と第9番は近現代的な交響曲の雰囲気で、後者の初演はオーマンディがおこなったことでも知られています。
第10番『アメリンディア』は、12曲中最大の規模を持つ大作で、作曲のきっかけは、1952年、サンパウロ市創設400年祭委員会からの委嘱によるものでした。どこかストラヴィンスキーの『春の祭典』を思わせる第1楽章によって開始されるこの交響曲は、先住民を守ったホセ・デ・アンチエタ神父の物語を讃えるという祝祭的な作品ということもあってか、聴きやすいものとなっているのが特徴。全体は、テノールにバリトン、バスという男声独唱陣と大規模な合唱を伴う5部から成るオラトリオとして書かれていて、演奏に1時間以上を必要とします。
指揮のカール・セント=クレアは、現代音楽からオペラまで幅広くこなすアメリカ出身の指揮者で、ルーカス・フォスや武満徹などの現代作品のほか、リストの壮麗なオラトリオ『聖エリーザベトの物語』といった録音がありました。
最近ではワイマールでのワーグナー『ニーベルングの指環』の映像作品で、シャープな演奏を聴かせていました。
【収録情報】
ヴィラ=ロボス:交響曲全集
CD1(999568)
・交響曲第1番『知られざるもの』
・交響曲第11番
CD2(999785)
・交響曲第2番『昇天』
・ニューヨーク・スカイライン・メロディ
CD3(999712)
・交響曲第3番『戦争』
・交響曲第9番
・序曲『そのような男』
CD4(999525)
・交響曲第4番『勝利』
・交響曲第11番
CD5(999517)・交響曲第6番『ブラジルの山々』
・交響曲第8番
・弦楽のための組曲
CD6(999713)
・交響曲第7番
・シンフォニエッタ第1番
CD7(999786)
・交響曲第10番『アメリンディア』
ローター・オディニウス
ヘンリク・ベーム
ユルゲン・リン
シュトゥットガルト国立歌劇場合唱団のメンバー
SWRヴォーカルアンサンブル・シュトゥットガルト
SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
カール・セント=クレア(指揮)
録音時期:1997-2000年
録音方式:デジタル(セッション)
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