著者 : けいこう舎編集部
──戦争の終わった翌夏、ミネは、同じ進歩的文学者仲間で、妻を亡くし四人の子供を抱えて困っていた野村から「お針のできるやさしい女性と再婚したい」と相談される。同情したミネはうってつけの相手として、裁縫教師を続けてきた妹、閑子を紹介。催促されて結婚し、てきぱきと家事をさばき子供たちにも慕われた閑子だったが……。 実際の出来事の衝撃から、壺井栄はこの作品を生み、仲間と社会に向かって問いかけた。これまでこんなことを問題にもしてこなかった日本社会で「妻の座」は流行語となる。『二十四の瞳』の壺井栄(1899-1967)もう一つの代表作! 壺井栄の作家像、作品の背景、残念な論争と社会の変化の顛末を追って、一つの私小説が社会と格闘した有様をたどる「【ねつれつ解説】壺井栄をナメるなよ!」(けいこう舎編集部)つき。 《帯》 家父長制、シャドウワーク、女性蔑視、性別役割分業、ルッキズム……。 いまだ名付けられてもいなかった問題に、ニコニコお人好しのおばさんの素朴な善意が立ち向かう! ・「妻の座」 壺井栄 7 ・【ねつれつ解説】「壺井栄をナメるなよ!」 栗林佐知(けいこう舎編集部) 130 (一)ニコニコ顔のおばさんが書いた「妻の座」 130 (二)壺井栄をナメるなよ! 134 現役のフェミニズム小説/「今じゃありえない!」ところにこそ/ 壺井栄をナメるなよ!/ (三)壺井栄の人生(戦前篇) 138 故郷、小豆島/プロレタリア詩人、繁治とともに/ (四)栄の人生(売れっ子作家になる) 143 作家デビューの「真相」/壺井栄とはナニモノか/戦時下の作家活動/ (五)そして「事件」は起こった 151 ちょっと変ちくりんな出来事/栄姉妹の事情/宮本百合子 (六)栄とフェミニズム思想 156 家族制度について/性別役割分業について/容姿による選別──最後の差別 (七)モデル小説論争 162 「岸うつ波」/「草いきれ」/「草いきれ」論争 (八)ちょっとかわいそうな徳永 167 徳永の孤立──日本社会が逃した大きなチャンス/栄(さかえ)と高枝(たかえ)/ 肝心の妹本人/徳永への不公平 (九)石牟礼道子をホメタタエルなら…… ・【ねつれつ解説】注 181 ・【ねつれつ解説】主な参考文献 190 ・「妻の座」本文 凡例 6・191