著者 : こずかた治
宮沢登は四十四歳、京都に本社のあるN栄を辞めて、いまや宮沢商事という金融会社をかまえる。金融業が扱う商品は「お金」、銀行などは信用が一番大切などというが、売るものを理解していないから信用を売買するなどと馬鹿なことを言うというのが持論。近年、猛烈な勢いで東日本に勢力を広げ始めた宮沢商事は個人小口融資部門に真野清香という女性を迎え、まさに破竹の勢いだが…。
南九州一を自称するディスカウントショップ阿古商店のオーナー阿古義男は、人並はずれてケチで好色な男だった。しかも自分以外のものが金を蓄えることを極端に警戒し、高学歴の人間を罵倒して自らの学歴コンプレックスを解消するというタイプ。餌食になったのが、阿古商店の折込チラシを作る広告大理店・アドプラン。経営者の徳倉真一は無理難題を押しつけられ、倒産への道を…。書下しリアル・タイム経済小説。
日本経済最大の危機、金融崩壊が迫っている。長期信用銀行は、公的管理という道でどうにか解決をみたが、それが決定した後日、日本リースが倒産した。もくろまれた長銀の不良債権放棄が不可能になったからである。その背景にあるのは、銀行がかかえる表向きの不良債権の額をはるかにオーバーする膨大な量の“飛ばされた”不良債権である。本書は、それが何故生じたのかという最大の疑問に答えてくれる。
一本一万円のワインを三本購入して、三万円の投資が、九万円を産む。半信半疑ながら、二十年近く経営してきた会社を倒産させたばかりの島崎にとっては、うまい話だった。島崎が参加したのは、エルックという団体だった。説明会をしきる和田という男は、自分の年収を二千万円という。経営者になる資格がないといわれた自分がこの会のシステムにのることで、成功したと説得するのだった…。
バブル崩壊後、銀行は多量の不良債権を抱え、不景気は本格化し、中小企業の倒産も日増しに増えていた。そんなある日、奇妙な宗教団体を率いる森川俊のもとにグループの一人、ビームファイナンスの社長・税所から妙な話が持ち込まれていた。九州のある商事会社の融通手形を、総計で五億程割り引いたという。九州の会社がなぜわざわざ東京の街金業者に…。森川達の巧妙な会社喰いが始まった。書下し経済小説。
先物取引会社・大桑商事の雇われ社長・森田は、友人の大塚に十億もの借金を申し入れた。期間は一日。しかし金はオーナーの瀬島の口座に振り込み、自由に引き出してもいいというのだ。仕手戦で追いつめられた、大桑商事消失の危機。債権保全をねらっておし寄せる債権者の群れ、自己の利益追求で、会社を裏切る獅子身中の虫。森田の打った最後の奇策は効を奏するのか。会社清算をめぐる欲望模様。書下し長篇。
「もう暴力の時代じゃない。頭の時代だ」とうそぶく森川俊。背に不動明王を彫り、作務衣に身を包む。過去は知れない。金融・不動産・法律・広告会社、そして政治結社を五人の男にまかせ、それらを駆使して罠をめぐらす。寺も乗っ取れば、国の援助金も詐取する。芸能プロが脅され五千万円が奪られた。ほんの下準備だ。この五千万が億の金に化ける…。組織から独立してダミーを動かすフロント・ビジネスの実態を描く。