著者 : ロッティ渡部
爆闘殺手黒猫爆闘殺手黒猫
午後七時、上海の人民政府ビルに灯が入った。建設ラッシュと数十万人の喧騒が中国最大の都市の夜を染めはじめた。深緑の制服に赤い星を付けた若い公安警察・荘飛鴻はパトロー中にシンガポールの実業家が眼前で暗殺されるのを目撃した。殺手は准南中路に佇む黒のチャイナドレスの女だった。事件より数時間前、狂龍は上海上空にいた。本名、李修龍。香港皇家警察の禄を食み、精鋭中の精鋭で組織されたO記の探長(警部)である。彼は隣席の若い婦人から奇妙にも声をかけられた。「上海にないもの、それは香港皇家警察」と。
香港/皇家辺境警察香港/皇家辺境警察
「李修龍。君は本日をもって、粉嶺辺区警察に転属になった」狂龍というあだ名をもつ男は拳を握りしめた。たった今まで彼は皇家香港警察の湾仔総部重案組(特捜隊)を率いる幇弁(警部)だった。最精鋭のO記で組織犯罪と三合会(正統派黒社会)を専門に捜査するのが任務だった。そりぁ、軌道をはずした強引な捜査をしなかったとはいわないさ。にしても九広鉄路が通う国境の街へ、なぜ左遷されなきぁならんのだ。若い散仔を相手にケチな事件を追うと考えると、意外にも。痛快無比。笑殺ハードボイルドの新浪潮傑作。
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