著者 : 中澤美喜子
『受胎告知』の前で『受胎告知』の前で
フィレンツェで初めてフラ・アンジェリコの『受胎告知』を見た南実子はその美しさの前に立ちつくした。想像していたより遥かに大きなそのフレスコ画は隅々まで丁ねいに描かれている。そしてその画の前で始まった出会いと別れ。南実子は自分が真実の愛を掴むのはいつのことか、と胸の奥に微かな震えを覚えるのであった。
瑠璃瑠璃
消費する欲望に安住していた瑠璃はある日、内奥にわく渇望に目覚める。その欲望の成就であるはずの日、元同僚の謀略によってそれは阻まれる。苦悩の日々の後、辿り着いたのは、謀った相手を赦す、という場所と時間であった。再生してゆく中で、恋人と訪れたフィレンツエでの心揺さぶる絵画との出会い。瑠璃の中に新たなる息吹が吹き込まれる。
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