著者 : 今井絵美子
身重のおよしが突然猫字屋に出戻ってきた。旦那の藤吉が店の金を持って失踪中だという。誰もが認めるおしどり夫婦にいったい何が?魚竹の跡継になった喜三次は藤吉の探索に一役買い、その一筋縄ではいかない胸の裡を聞きつけるー。消える命あれば、生まれる命あり。めぐる季節のなか、人を慈しみ、縁を大事に生きる尊さ。いつの世も変わらぬ人の情を哀歓あふれる筆で描きだす、著者畢生の大シリーズ、感動の最終巻!
時は幕末。福山藩からわずか25歳で老中に就任した阿部正弘を待ち受けていたのは、数々の国難だった。黒船はじめ度重なる外国船の来航、欧米列強に対する攘夷派の強硬論、逼迫する財政と弱体化する幕藩体制…。一刻の猶予もない中、正弘は外交・内政に煩悶し、国論の統一に奔走する。身分の上下にかかわらず人材を登用、夜明け前の日本で難局に立ち向かい革新をおこなった男の熱き人生を描く、著者初の本格歴史時代小説!
老いてなお「女」でいつづける母・登勢。そのあけすけで奔放な性を嫌悪し、実家を飛び出した不器用な娘、千歳。やがて凡庸ながら温厚な夫と結婚し、憧れのマイホームを構え、幸せな人生を手に入れたと信じて疑わなかった。種違いの美しい妹・ユキがある日転がり込んでくるまではー。高度経済成長期、重工業都市として発展していく福山は芦田川河口の町を舞台に描く、壮絶な愛憎小説!
日々堂で代書をする戸田龍之介を、無二の友桜木小弥太の姉が訪ねてきた。突然の来訪に戸惑う龍之介に姉は弟の失踪を告げる。桜木家に婿入りした小弥太は三月前に赤児に恵まれたが、妻の不義の子との噂があった。懸命の捜索にも拘わらず行方は杳として知れないものの、桜木家の秘事が明らかに。やがて、己を貫く小弥太の真意を知った龍之介はー感涙の江戸情話。
九年前、武家を捨てて照降町にやってきた喜三次に一目惚れしたおゆき。所帯を持って早二年、待望の赤児が腹に宿ったことを知らされるもおたふく風邪に罹っていることが判明。一方、人生の大きな節目を迎えた喜三次は、照降町の面々と水魚の交わりをしてきた年月を振り返り、書役の職を辞して第三の人生を始めることを決意するー。お目出度と心配事に町は上を下への大騒ぎ!絶好調シリーズ、胸うち震える佳境の第七弾!
黒田官兵衛麾下の勇将堀平右衛門の晩年。出奔した平右衛門を待つ妻の胸中は?息子同然の手代を自殺に追い込んだ矢場の女に入れ揚げた、大店の主の欲望と顛末。不仲の妻と離縁も考えた商人は、妻が病に倒れて初めて夫婦の関係を見つめ直し…。人の心に降る雨はいずれ止み、希望に満ちた空を見せる。すれ違う江戸の男女を丁寧に描く三人の、時代競作第三弾。
笑い声の絶えない養護院草の実荘で暮らす双子の姉妹ちさととちなみ。その母親お千佳が出産を間近に控え、妊娠中毒症に罹ってしまった。そんな折り、木挽町の両替商三国屋紀右衛門宅に、かつて放蕩の限りを尽くして勘当された養嗣子の児太郎が訪ねてくる。ところがその児太郎は脇腹を匕首で刺されていた上に、労咳を患っていたー。親子の愛と儚さ、男と女の情を細やかに描く書き下ろし時代小説、好評シリーズ第八弾。
日々堂のお葉の元に山源の総元締源伍から文が届いた。だが、筆蹟があまりにも弱々しく、女ごの手になる文にみえる。いぶかるお葉は思い切って山源を訪ね、驚愕した。源伍は口も回らない状態で臥していたのだ。さらに縋りつくような目をお葉に向けて言葉を吐いた。家を飛び出したきりの息子源一郎を捜して欲しい、と(「花卯木」)-江戸に涙と粋の花を咲かす哀愁情話。
放蕩者だったが改心し、雪駄作りにはげむ丑松が、猫字屋に一俵の小豆を持って来た。妹のおきぬが世話になっている礼だと言うが、時を同じくして、汁粉屋の蔵に賊が入っていて…(「寒の雨」)。病に臥す助松の容態が悪化。竹蔵は、助松と揉めた過去を語り、罪滅ぼしのため助松の息子、幾松にある提案をする(「寒四郎」)。過去のしがらみも明日への糧に、どこまでも健気に前を向く人々を温かく描く、書き下ろし江戸人情小説第六弾。
佐吉と祝言をあげ、猫字屋の嫁がすっかり板についたおきぬ。今後も照降町にはよきことだけが待っているように思われたその矢先、木戸番夫婦の許ですくすく育っていた三兄妹の末っ子お梅が突然の病魔にたおれる。砂を噛むような想いで己を責め続けるおすえ。それでも後ろを振り向いてばかりはいられない。人情で繋がった世界に身を置き、悲しみや不幸から立ち上がろうともがく人々をあたたかく描く書き下ろし時代シリーズ第五弾。
人形浄瑠璃が縁で二人は出逢った。男は尾道で造酒屋を営む忠三郎。女は廻船問屋の後妻・お夕。お夕が後妻に入った経緯を知った忠三郎は、次第に彼女に心を寄せていくが、婿養子の身でできることは限られる。そんな中、お夕が窮地に追い込まれることに。お夕を救おうとする忠三郎。忠三郎への気持ちを明かすお夕。世間から後ろ指を指されようとも、二人は覚悟を決めた。
日々堂の女主人・お葉は店衆の政女を見舞いに訪れた。目の前で主を斬殺され自身も肩を斬られた政女を、一刻も早く立ち直らせたかったのだ。滋養をつけてもらうため携えた桜飯には、便り屋仲間の励ましが詰まっていたー美味い料理と味わい深い人情が満載の“泣ける時代小説”。
巧妙な手口が神業と噂の盗賊、鼬鼠の伝五郎が捕まった。残した千社礼の裏面に拙い文字でおとっつァんと小さな落書きがあったのが決め手という…悪行に手を染めても薄幸の女たちと築いた家族を護ろうとした男の数奇な人生。どんな親でも親は親ー血が繋がっていようといまいと、立派であろうとなかろうと、その巡り合わせは特別なもの。いつの時代にも通じる親子の情を万感胸に迫る筆で謳いあげた人情時代小説・第四弾!
日々堂で代書をする戸田龍之介は、剣術仲間の三崎小弥太を案じていた。家格と美貌に負けて、好きな男がいる桜木登和と祝言を挙げて以来、道場に来ないのだ。そんな中、友七親分の女房・お文から、日々堂の宰領・正蔵とおはま夫婦の娘・おちょうに大店の若旦那との縁談が持ち込まれるが…。泣き暮れる日があろうとも、笑える明日があればいい。人気沸騰シリーズの第七弾!
ある日猫字屋のおたみの許を訪ねて来た鹿一。髪結の腕も確かで雛男の彼が雇人を続けていたのには他人に言えない訳があって…。別の日、思案橋の欄干に窶れ果てた姿をさらしていた姉妹弟子のおしん。吉原で花魁を務める姪に一目逢いたいー余命幾ばくもない彼女の願いを叶えようとおたみ達は画策する。共に笑い、共に泣き、言葉にならない哀しみ苦しみに心を寄り添わせようとする人々を温かく描きだす人情時代小説第2弾!
おたみが切り盛りする髪結床の猫字屋は今日も大賑わい。近所の住人たちがそぞろ集まり、おしゃべりや噂話に花を咲かせる。そんな折、居職の箸師・得次郎が刺されたという。なぜか自身番には届け出ないでほしいと懇願する得次郎が今わの際につぶやいた「忘れ扇」とは一体何なのか?姿を消した女房のお阿木、遺された3人の子供…一筋縄ではいかない男女の情や、血は繋がらなくとも通いあう親子の情。涙をしぼる人情時代小説シリーズ、スタート!
剣術家の戸田龍之介は、朋輩の三崎から酒に誘われた。御徒組次男坊の三崎には、急逝した親友の遺言で、その許婚・桜木登和との見合話が進んでいた。桜木家は家格も上で登和は美人。逆玉のはずが、三崎は登和から耳を疑う告白をされていた。話を聞いたお葉も仰天。直後、日々堂では飼い猫のシマが行方不明になりさらなる大騒ぎに…。人気沸騰の“泣ける”時代小説!
伊豆に湯治に出かけて二月、おたね婆さんが戻ってこない。おたねはひぐらし店で独り暮らしの身。元は辰巳芸者で、材木商の後添えとなったが、前妻の子が主となってからはひぐらし店に追いやられていた。湯治はその義理の息子がお膳立てしたもの。長逗留しても不思議はないが、おたねを家族同然に思う近所の者が大番頭に尋ねると、思いも寄らぬ答えが。おたねを慕う者が急ぎ集まった。