著者 : 前川ほまれ
山田風太郎賞受賞後第一作 寄り添い、寄り添われ、生きていく 動物介在療法に携わるDI犬のスピカと、そのハンドラーの凪川遥が、横紋筋肉腫を患った5歳児、強迫性障害を抱える中学生、産後うつの患者や家族たちと向き合う。それは、凪川自身の内面にも変化を起こし、やがて大きな決断をすることに。 動物介在療法を知るきっかけとなった同期との出会いとその後、育児放棄をした母とのこれから。 犬と人との関係を通じ、人と人との心地よい距離と自分自身のありようを見つめ直していく。 命の現場を舞台に、現役看護師の著者が描く希望の物語 第1章 2023年5月 白い生き物 ♯1 2012年 春 第2章 2023年8月 水のないプール ♯2 2012年 夏 第3章 2023年12月 真冬の蟬 ♯3 2019年 冬 第4章 2024年2月 線を跨ぐ ♯4 2022年 夏 第5章 2024年3月 正しい距離 エピローグ 2024年 春
読書メーター読みたい本ランキング第1位 (単行本 月間 2023年5月19日〜6月18日) いつか、義務も後悔も手放して。 あなたはあなたの人生を生きるのよ。 私たちはこの港町で家族を介護し、 震災で多くを失い、そしてあの人に救われた。 ヤングケアラーたちの青春と成長を通し、 人間の救済と再生を描く渾身の傑作! 2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽は、統合失調症を患う母を介護し、家事や看病に忙殺されていた。彼女の鬱屈した感情は、同級生である、双極性障害の祖母を介護する航平と、アルコール依存症の母と幼い弟の面倒を看る凛子にしか理解されない。3人は周囲の介護についての無理解に苦しめられ、誰にも助けを求められない孤立した日常を送っていた。しかし、町に引っ越ししてきた青葉という女性が、小羽たちの孤独に理解を示す。優しく寄り添い続ける青葉との交流で、3人は前向きな日常を過ごせるようになっていくが、2011年3月の震災によって全てが一変してしまう。2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある日、彼女は旧友たちと再会し、それを機に過去と向き合うことになる。ヤングケアラーたちの青春と成長を通し、人間の救済と再生を描く渾身の傑作長編!
ただ、ただ、彼女たちがたまらなく愛おしい。 こんなにも苛酷なこの世界で、 生きのびてくれて、ありがとう。 ーー中脇初枝氏 「人を依存症にするのは、快楽じゃないよ。 心身の痛みや、それぞれが感じている生きづらさが原因で依存症になっていくの」 アルコール依存症の母親をもつ柳岡千明は、退院後の母親が入所する施設「セゾン・サンカンシオン」へ見学に行く。そこは、様々な依存症に苦しむ女性たちが共同生活を行いながら、回復に向けて歩んでいくための場所だった。迷惑を掛けられてきた母親に嫌悪感を抱く千明だが、施設で同じくアルコール依存症を患っているパピコとの出会いから、母親との関係を見つめなおしていくーー。 人間の孤独と再生にやさしく寄り添う感動作!
病んだ心を読み解く営みは、健全「すぎる」精神の持ち主には難しい。だからこそ登場人物たちのさまざまな屈託が、物語世界とわたしたちとを結びつけて、(苦いけれど)豊かなストーリーがここに立ち上がる。決して忘れられない読書体験が、始まる。春日武彦(精神科医) 医療刑務所で勤務することになった精神科医が見たものは、罪と病の間で揺れ動く魂の叫びだった……。『跡を消す』で鮮烈なデビューを飾った著者が描く、社会派エンターテインメント大作。
俺が飛び込んだのは、 わけありの死に方をした人達の部屋を片付ける会社だったーー 選考委員の満場一致で選ばれた、 第7回ポプラ社小説新人賞受賞作! 一気読みだった。上手い。 特殊清掃という業界の内幕が持つ興味深さ・面白さだけに頼ることなく、 個々のケースごとに異なるドラマを作り、 そのひとつひとつが実に読ませる。 主人公が「死とは何か」を考えるのと一緒に、 読者も自ずと死について考えるようになる。 その構成が見事。 ーー大矢博子(書評家) 気ままなフリーター生活を送る浅井航は、 ひょんなことから飲み屋で知り合った笹川啓介の会社 「デッドモーニング」で働くことになる。 そこは、孤立死や自殺など、わけありの死に方をした人たちの 部屋を片付ける、特殊清掃専門の会社だった。 死の痕跡がありありと残された現場に衝撃を受け、失敗つづきの浅井だが、飄々としている笹川も何かを抱えているようでーー。 生きることの意味を真摯なまなざしで描き出す感動作!