著者 : 北野勇作
読みまどい、辿りつけ。きっとあるはずだ。竹林(と美女)の理想郷が。十人の人気作家による「美女と竹林」モチーフの新作短編集。
レッドキング、チャンドラー、そしてマグラーが相争った「怪獣無法地帯」の真相に迫るー山本弘の表題作「多々良島ふたたび」。希少生物としての怪獣の保護を図る戦闘的環境団体とウルトラマンが対峙するー小林泰三「マウンテンピーナッツ」。生命の危険を顧みない、怪獣類足型採取士の死闘ー田中啓文「怪獣ルクスビグラの足型を取った男」など、SF的想像力でウルトラ怪獣とウルトラマンの世界を生き生きと描く7篇。
楽しいって、なんだろう?世界からヒトが消えた世界のカフェで、模造亀のカメリは思う。朝と夕方、仕事の行き帰りにカフェを訪れる客、ヒトデナシたちに喜んでほしいから、今日もカメリは石頭のマスターとヌートリアンのアンと共にカフェで働き、ささやかな奇跡を起こす。心温まるすこし不思議な物語。
本篇の再解釈に挑む山本弘、正義の化身となった女子高生の苦悩を描く小林泰三の短篇ほか、北野勇作、三津田信三、田中啓文、酉島伝法、藤崎慎吾が日本SFの象徴的イコンをリスペクトする計七作
狐かオバケか、人に化けた者たちが徘徊する町。かつて巨人が生まれた町。ときに不思議なことが起こり、特定危険区域と呼ぶ人もいる。大災害に見舞われたあの日から。いま私は娘の春子と、異形の姿の妻と、三人で暮らす。この幸せを脅かすものがあれば、私は許さない…。切ない感動に満ちた再生の物語。
かめくんは自分がほんもののカメではないことを知っている。クラゲ荘に住みはじめたかめくんは模造亀。新しい仕事は特殊な倉庫作業。リンゴが好き。図書館が好き。昔のことは憶えていない。とくに木星での戦争に関することは…。日常生活の背後に壮大な物語が浮上する叙情的名作。日本SF大賞受賞。
昔々のこと。世界が古くなったので、えらい人たちは獏を創って、新しい世界を夢見てもらうことにしました。みんなは安心して獏のなかで眠りにつきました。でも、やがて獏は不安に囚われてしまったのです。自分のなかの人たちは実は死んでいるのではないか、と…まあ、そんなこんなで私は、戦いつづけているわけだ。商店街で敵を待ち伏せしたり、ヒト型戦闘機械に乗り込んだり、西瓜太郎の指揮で悪の王国に奇襲をかけたり。でも肝心の私とは誰か、まったく思い出せないのだけれどね、あの夕陽のきれいな街の風景以外はー9つの短篇と10の掌篇が織りなす、不条理で情けなく、けれどヒトに優しい戦争の話。
父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々…そんな〈おれ〉の想い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったい〈おれ〉はどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう?-日本SF大賞受賞の著者が描く、どこかなつかしくて、せつなく、そしてむなしい物語たちの曖昧な記憶。