著者 : 和巻耿介
武士の子として生まれ、屈強な青年に成長した五王(石川五右衛門)。膂力を見込まれ、人買船の水主となった五王は、船倉に隠れていた麻耶から、生き別れた双児の兄・信平と深い関係にあったことを知らされる。海賊船と渡り合い撃破する五王だったが、羽柴秀吉の軍船に荷もろとも差し押さえられてしまう。麻耶と夫婦を装い逃走した五王は、京を目指し闇を奔り出すが…。書下し新歴史時代長篇。
奈良で売薬を業としていた大森通仙一家に思わぬ災難がふりかかってきた。店の前に鹿の死体が置かれていたのだ。鹿殺しの堅い禁制を破り、所払いとなった通仙親子に襲いかかる、数奇な運命から、いつしか江戸吉原の花魁になっていた娘のおたかだったが…。(第1話曲水の盃)。“いろまち”にまつわる物語を艶に絡めて描く浮世草紙。全十一話の傑作集。
スラム街の医師・馬島〓@43B9は、貧困球済に産児制限の必要を痛感した。その先進国欧米に留学、日本で初めて産制思想の普及に乗り出すが、産めよふやせよの時代、風当たりが強い。彼の仕事は社会の改革である。そのため産制運動と共に幾多の社会事業や日ソ、日中交渉の影武者も演じた。長編ドキュメント・ノベル。
王道の武術を志す宗近恭平。前編〈疾風編〉の北海道から舞台は転じ、より雄大の地・中国へ。統一前夜の大陸で、待ち受けるは試錬の罠、必殺の双竜刀、牙剥く匪賊、妖麗の美姫。一難去ればまた新たなる強敵が!新興教主、満州浪人、愛弟子次郎らをまじえ、求めざる闘いに巻きこまれつつ、磨かれる武技、悲願はなるか往け恭平。
武道家たちが北海道を目指した明治の末期。宗方恭平もそのひとり。柔・剣術では食えない。名目は北海道開拓だが、目的は武芸を磨くこと。試合に継ぐ試合。鷹同士の死闘は勝っても復讐を招く。恭平は択捉に渡り、お竜の愛に戸惑った。芸か愛か。まだ驚異の護身術“合気道”の会得に気付かない彼が、乱世の覇道を模索する。