著者 : 塚田浩司
信商デパートーーそれは長野県の信州商業高等学校で、在籍生徒総動員で行われる年に一度の大イベントである。生徒たちが模擬会社を組織し、自らの手で「信商デパート」と呼ばれる大規模販売会を企画・運営するのだ。 冴えない中学生時代に信商デパートを訪れ、その楽しさに魅せられた三浦和樹は、「ここの社長になりたい!」という野望を胸に信商に入学した……のだが、生来の内気な性格を打ち破ることができず、3年生となった今年も一社員としての参加にとどまるであろう、相変わらずの冴えない青春を送っていた。 そんなとき、密かに憧れていた教師の村松摩耶に呼び出された和樹は、彼女から「社長特別補佐」に任命される。聞いたこともないその役職に戸惑う和樹。しかも今年度の社長は文武両道に秀でた完璧少女として名高い武田晴香なのだから、自分の出る幕などどこにあるというのだろう。ますます困惑する和樹に、村松はさらなるミッションを与えた。「あの子の様子を見張って、私に報告してほしいの」と。 アイドル志望の少女と料理男子が「和食の甲子園」を目指し奮闘する姿を描いた『コイのレシピ』の著者が新たにお贈りする、実在する高校生たちによる模擬会社とその事業をモデルとした青春ストーリー!!
長野県に住む高校1年生の瀬野綾音は、情熱を捧げていたアイドルオーディションの最終審査に落選した半年前から空回りを続けている。新たな夢はそう簡単には見つからず、興味本位で近づいてきた友人を一喝してからクラスでも浮いている。だから今日も、使われていない第二理科室で水槽にたゆたう鯉を眺めながらひとりで弁当を食べるーーはずだった。思わぬ闖入者は、イケメン・秀才・スポーツマンで同学年でも群を抜いて目立つ存在の櫻井潤。しかも潤は手製だという弁当を差し出して、思いの丈を綾音にぶつけてきた。「一緒に全日本高校生WASHOKUグランプリに出てほしいんだ」、と。……え?--思いもよらぬ展開で「和食の甲子園」とも呼ばれる舞台を目指すこととなった、アイドル志望だった女子高生と料理上手な男子高校生の悪戦苦闘を描いた「第2回ステキブンゲイ大賞」大賞受賞作。栄冠の行方とその先は、「コイ」だけが知っている!?