著者 : 大塚卓嗣
炎と煙が払暁の空を赤黒く染め、本能寺を焼く。天下人・信長を討たんと光秀の刺客どもが刃を振るう地獄で、森蘭丸は独り護る、信長の首を。だが追手から逃れようとしたその時、炎が身体を呑み込んだ。目覚めるとー右半身は美貌のまま、左半身が醜く焼け爛れていた。ここで果てるわけにいかぬ。蘭丸は光秀側の安田作兵衛を抱き込み、ある計略を為し遂げんと…復讐に燃え盛る美青年の計略の行方。激しき戦国悪漢小説。
松平家の嫡男にして、尾張国の人質・竹千代は、その才を織田信長に気に入られるも、今川家との人質交換で、三河国へと移される。そこで竹千代は、申楽の師・観世十郎と出会い、駿府館で今川義元に近づく機会を得る。今川家の実権を掌握する太原雪斎に、心の内を疑われながらも、宿敵・義元からは、その眉目秀麗な容姿と才能を、歪んだ形で寵愛されることになる。狂おしいほどの殺意を秘め、舞台は運命の桶狭間の合戦へと向かうのだが…。令和元年、歴史小説の新たな地平を切り拓く傑作誕生!
元亀元年(1570年)、朝倉家家臣の小林吉隆は、織田家との合戦中、富田長繁に命を救われる。世の道理を重視する吉隆だが、忠に薄く戦好きな長繁とは、不思議と馬が合った。しかし、崩壊へと向かう朝倉家に見切りをつけた長繁は、織田方へと寝返ってしまい…。歴史からかき消えた狂気の武将、富田長繁。新鋭による戦国秘史!
水野勝成。信長にその武勇を認められ、一騎駆けで戦場を切り裂き三百もの首を獲る、齢十九の若き猛将。その人生は、父・忠重から勘当され一変した!家を追われ、名を捨て、どん底に陥った勝成は、ただひたすらに戦場を渡り歩く。天下一のろくでなし武将は放浪の果てに何を掴む!?そして挑んだ関ヶ原の大勝負とは!水野勝成の名を世に知らしめた、最強歴史小説。
「伊織よ。今日からお前は、俺の息子だ」播磨の庄屋の次男・田原伊織は、叔父・武蔵に宣言されて、なかば強引に明石藩主・小笠原忠政の小姓にされた。武家の作法も知らず、剣すら振れない自分がなぜ?混乱し反発する伊織だが、自分の前にも武蔵に養子がいたことを知り、やがてひとつの結論にたどり着く。それは、剣豪という枠に収まりきらない男の、宿願とも云える壮大な野望だった!そして寛永9年、江戸城の将軍・家光御前試合で柳生の剣客と対峙した伊織は、この一戦に秘められた、幕府の真の目的を知ることになるー。小倉藩筆頭家老になった息子と武蔵ー異色の父子を描く!