著者 : 大崎清夏
歩いていった先に大きな水の塊があることは安心だった。 海でも川でも湖でも。 いまを生き、いまを描く詩人による 詩と散文のさきに見出された光り溢れる 初めての書き下ろし連作小説集。 ひとと出会い、土地に触れ、わたしはわたしになっていく。 みずからの世界の扉をひらく全5篇。 * 出会った日が記念日になるほどの特別な出会いが、人生に何度あるだろう。 けれどもいまの私は、記念日の日付や出会いの瞬間のドラマよりもっと別のものに憧れている。それはもっと連綿と伸びて続いてゆく何か、日付では数えたり示したりできない、コーヒーの湯気とか、使い古した毛布のやわらかさとか、夜眠る前にひらく本のページが浮ついてつくる影とか、そういうものを共有することのほうに宿る何かだ。 湖畔に暮らす 眼鏡のバレリーナのために 次の足を出すところ みなみのかんむり座の発見 二〇二四年十一月三日
穂村弘さん絶賛! 「驚くべき希望の書。 頁を開くと、無表情な自分の胸に何かが熱く流れ込んできた。 その優しさとめちゃくちゃさに、びっくりして笑ってしまいました。 そうか、私も、どこで何をしてもいいのか。」 (オビ文より) ー - - あなたの言葉よ、どうか無事で──。 会社を辞め、身ひとつで詩を書いて生きることにした。 地球のあちこちで、言葉に翻弄されて立ち尽くし、言葉に勇気づけられて歩き出す。 中原中也賞受賞の詩人が、小説とエッセイで描く“魂の解放”。 一日の終わり、テラス席で深呼吸をして書きはじめる。/映画祭で来日した大スターの、通訳のあの子の涙。/元同僚の本棚に『フラニーとズーイ』を見つけたら。/海外の詩祭に参加し、エネルギッシュな詩人たちに刺激を受ける。/友人のダンサーに「一緒にメコン川を眺めよう」と囁かれ、ラオスのフェスティバルへ。/象形文字の故郷を見てみたくなって広州へ。/ベルリンで恋した古書店で詩の朗読会をしたいと申し出る。/旅先ですっかり山の虜になる……。 あちこちで出会いに胸を熱くした瞬間を書く。書くことであたりまえの自分でありつづける。 詩的な小説と散文、旅のエッセイを編みこんだ、大崎清夏の親密で、自由で、喚起力ゆたかな言葉と物語に親しむ一冊。 心に火を灯す言葉の、詰め合わせギフト。 〈初の小説!傑作3篇を収録〉 〜 〜 〜 〜 〜 誰かのことばで覆い尽くされた世界は息苦しいけれど、私たちは流転のなかにいるのだから、 きっと雲が晴れるようにそこここでことばは欠け、ことばの意味もあちこちで欠けて、風が入ってくるはずだ。 その風について正確に書き記すことができたら、もしかしてそれは詩なのかもしれない。 (「意味の明晰な欠け方について」より) 〜 〜 〜 〜 〜 [目次] ー - - 目をあけてごらん、離陸するから ・ヘミングウェイたち ・シューレースのぐるぐる巻き ・フラニー、準備を整えて(小説) ・雷鳥と六月(小説) ・呼ばれた名前(小説) 歌う星にて、フィールドワーク ・アメリカ大陸を乗り継ぐ ・あなたの言葉よ ・航海する古書店 ・音読の魔法にかかる(ウルフのやり方で) ・広州の鱈 ・はじめてのフェスティバル ・神様の庭は円い ・意味の明晰な欠け方について ・おうちへ帰る人 ・うれしい山 ・プラネタリウムが星を巡らせるとき ハバナ日記 少し長いあとがき かっこいい女に呪われて ー - - 目をあけてごらん、離陸するから ・ヘミングウェイたち ・シューレースのぐるぐる巻き ・フラニー、準備を整えて(小説) ・雷鳥と六月(小説) ・呼ばれた名前(小説) 歌う星にて、フィールドワーク ・アメリカ大陸を乗り継ぐ ・あなたの言葉よ ・航海する古書店 ・音読の魔法にかかる(ウルフのやり方で) ・広州の鱈 ・はじめてのフェスティバル ・神様の庭は円い ・意味の明晰な欠け方について ・おうちへ帰る人 ・うれしい山 ・プラネタリウムが星を巡らせるとき ハバナ日記 少し長いあとがき かっこいい女に呪われて